症例は79歳男性. 感冒, 体重減少を主訴に近医受診し, 腹部CTにて右副腎腫瘍を認め, 精査目的に当科入院. 腹部CT上, 内部不均一な腫瘤を呈し, 血中, 尿中ホルモン検査は正常値で, MIBGシンチ上 uptake なし.
131Iアドステロール副腎シンチでは右副腎に集積低下を認めた. 内分泌非活性副腎癌も考慮し右副腎腫瘍摘出術を施行した. 摘出物は肉眼的に蜂窩状を呈しており, 組織学的には内部に少数の原頭節と虫卵を認めた. ELISA, Western Blot 法にて血清学的に
エキノコックス
陽性が確認され, 多包性
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症と診断された. 肝, 脳, 肺等, 他に病巣は認めなかった.
エキノコックス
症には, 単包性, 多包性が存在し, ヨーロッパ諸国, 地中海沿岸はおもに単包性が多く, 日本では多包性が多く生息する. 多包性
エキノコックス
症は約98%が肝原発であり, 稀に脳, 肺, 骨にも感染するが, 副腎発生での症例報告は本邦においてはない. またヨーロッパにおいては単包性での副腎発生の症例報告はあるが, 頻度は0.05%と低い. 多包性副腎
エキノコックス
症の報告は調べ得た範囲で世界に報告がなく, 第1例目と考えられる. 泌尿器科領域ではまれな寄生虫感染症も北海道居住歴の患者では, 副腎腫瘍の鑑別診断として念頭にいれる必要があると思われた.
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