南アジア,東南アジア,東アジア,オセアニア地域に広く生息する放浪種の
ミナミオオズアリ
Pheidole fervens Smith, 1858は,日本国内では,南西諸島から九州南部に連続分布している.京都市で2020年にミナミ
オオズアリ
を採取したので,本州初記録として報告するとともに,本種の現在の生息状況と2016年以降の発見場所周辺の調査資料から本種の侵入定着の時期を推定し,同時に在来アリへの影響を明らかにした.2016年から2019年に実施した調査では26種のアリ類が採取されミナミ
オオズアリ
の採取はなかったこと,ミナミ
オオズアリ
は2020年9月に97個体,2021年10月に457個体とわずか30分間の砂糖水ベイト誘引でメジャーワーカーを含む多数のワーカーが採取されたことから,侵入定着時期は2019年から2020年初頭と推定した.2021年11月下旬と12月中旬に実施した調査では,陸続きである南北方向に約100 m拡がっていたことから本種の分布拡大速度は2年間で約50 mと予想した.この調査で15種2150個体のアリを採取し,ミナミ
オオズアリ
侵入区とその周囲の非侵入区に分けアリ相を比較し,ミナミ
オオズアリ
侵入の影響をみた.侵入区でミナミ
オオズアリ
は,他のアリ種に比べ62 %と最も高い採取率を示し,採取個体数も総採取アリ数の66 %と,すでに優占種であった.侵入区では,在来の普通種のトビイロシワアリ
Tetramorium tsushimae Emery, 1925の平均採取個体数は非侵入区の1 %と少なく,クロヤマアリ
Formica japonica Motschoulsky, 1866は採取されず,ぞれぞれの採取率はミナミ
オオズアリ
の存否で差異が認められたことから,これらとミナミ
オオズアリ
が置き換わる可能性も示唆された.一方,
オオズアリ
P. nodus Smith, 1874は,その生息適地に重なるミナミ
オオズアリ
の分布域では,ミナミ
オオズアリ
と同所的に生息し,
オオズアリ
の存否では平均採取個体数と採取率には差異はみられず,本種の侵入による影響は小さいと考えられた.また,ミナミ
オオズアリ
に先んじて侵入定着しているケブカアメイロアリ
Nylanderia amia(Forel, 1913)では,その平均採取個体数と採取率が侵入区で2.7個体と29%,非侵入区で2.1個体と29%と同程度の値を示し,侵入区と非侵入区で採取率に差異がなく,本種の侵入影響は明確ではなかった.
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