与論島, 西表島, 台湾の琉球島, マーシャル群島およびカロリン諸島のマンジュウヒトデ, ジャノメナマコ,
オニヒトデ
から得られた総計22個体のソコカクレウオ属の標本を検討した.これらの標本は, 計測形質, 体節形質, 歯の形状と配列, 耳石の輪郭, 頭部と体部の色彩が
Carapus mourlaniの従来の記載とよく一致し, 全て本種と同定された.本種にその色彩的特徴に由来する新和名カザリカクレウオを与える.本報告で扱った11の計測計質について全長との関係で回帰式を求めた結果, 全ての形質が不等成長をすることが判明し, 頭幅の回帰係数が最も高い値となった.総脊椎骨数は従来の報告より明らかに変異幅が広かった.本種はマダガスカルを模式産地とし, インド・太平洋域に広く分布するが, 与論島, 西表島, 琉球島, カロリン諸島は新産地である.本種の発見例はそのほとんどがマンジュウヒトデからであるが, ジャノメナマコ, タマナマコ,
オニヒトデ
からの若干の報告があり, 本報告は
オニヒトデ
に関する第2番目の記録でもある.従来の報告ではハワイのオアフ島が本種の最北端の産地であり, 与論島が確認された最も北の産地となる.しかし, 本種の発見例が最も多いマンジュウヒトデが四国南西部までに, また, 極めて稀な宿主ではあるが
オニヒトデ
が紀伊半島までに分布することから, 本種が与論島以北に分布している可能性は十分にある.
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