2 型糖尿病を伴った慢性歯周炎患者に対し,歯周外科治療を含む歯周治療およびインプラントによる口腔機能の回復を行い,メインテナンスに移行し 5 年経過した症例について報告する。患者は 57 歳の男性,初診時, 17 の動揺および疼痛により来院した。15 年前より 2 型糖尿病(空腹時血糖値 150mg/dl,HbA1c 6.7%(NGSP 値))と診断され加療中であった。初診時の平均プロービングポケットデプス(PPD)は 3.4 mm,4 mm 以上のPPD の割合は 24.4%,プロービング時の出血の割合(BOP 陽性率)は 30.8%,口腔清掃状態は OʼLeary のプラークコントロールレコードで 36.6%であった。エックス線写真所見として全顎的な垂直性および水平性骨吸収を認めた。初診時 24.4%であった 4 mm 以上の PPD の割合は,内科医との連携のもと行った歯周基本治療により6.1%に減少した。その後,歯周組織再生療法およびインプラント埋入手術を行った。再評価後,最終補綴物の装着を行い,2007 年 6 月よりメインテナンスを開始した。本症例では,安定した血糖コントロールの状態で歯周治療を行う事ができた。しかしメインテナンスに入り HbA1c が 7.4%以上に上昇する時期もあり,糖尿病治療に対する再モチベーションが必要となった。今後も血糖コントロールに注意しながら,注意深くメインテナンスを行っていく予定である。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(2):189-199, 2013
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