美術ならびに美術教育成立の鍵は「視覚」にある。それは脳で,しかも,学習されることにより生まれる。本論はこの認識をもとに,これからの美術教育のあり方を,視覚の教育として提言するものである。昔も今も,そして将来も多分そうであるように,時代や文化は,そこに生きる人々によるそれぞれの見方,見せ方,考え方,つまり固有の視覚を持つ。美術はこの視覚を造形化するものである。したがって美術を学ぶことは,時代や文化の視覚を学ぶことに他ならない。本論では,まず視覚の意味,そして美術様式の変遷は視覚の歴史であること,さらに,日本の図画教育における視覚の扱いかた,以上三点について明らかにし,結論として,今日の社会状況が求める図画工作科・美術科での教育は,鑑賞と表現の学習を通して視覚コミュニケーション力を育成する,視覚の教育であることを論じた。
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