1.はじめに
地理学分野における地理情報システム(GIS)の活用は従来から進んでいるが、近年では商用の高価なソフトウェアに引けをとらない機能を有した無償で利用制限の少ない
オープンソース
ソフトウェアが普及し始めている。
本発表では、
オープンソース
GISソフトウェアに焦点を当て、その意義、歴史と現況、将来性について概説する。
2.「オープンソース
」であること
プログラムのソースコードが公開されている
オープンソース
ソフトウェアには、利用、再配布、改変の自由や、開発者と利用者からなるコミュニティによる運営など、単にソースコードの公開だけではない様々な特徴があり、これらが重ね合わさって高い価値を提供している。
3.オープンソース
GISソフトウェアの歴史と現況
オープンソース
GISソフトウェア(またの名称をFOSS4G; Free Open Source Software for Geospatial)の源流は、20世紀のUnixワークステーションの時代に遡り、その時代に開発されたツールは今なお第一線で活躍している。
本格的に普及するようになってきたのは、今世紀に入った2001年以降である。
オープンソース
ソフトウェアの運営がインターネットを介したコミュニティによるものであることから、ちょうどインターネットが世界的に普及するのに符合している。
今日に至るまでに、
オープンソース
GISソフトウェアは、クライアントPCで動作するものと、サーバ側で動作するものをあわせて、数百も存在しており、このうち特に性能面で優れている十数種類は世界で広く利用されている。
また、これらのソフトウェアから利用可能な地理データがインターネット上に無償で提供されるようにもなっており、利用者はソフトウェアだけでなく、地図データも無償で手に入る時代になりつつある。さらに、オープンストリートマップ(Open Street Map)プロジェクトに代表される、無償で利用制限の少ない地理データプロジェクトも急激に成長しており、地理データの「
オープンソース
化」とでも呼べる現象も進んでいる。
4.オープンソース
GISソフトウェアの将来性
位置情報を活用したiPhoneアプリなどの普及に見られるように、GeoSpatialなものはIT(情報技術)のホットな領域として認知されるようになり、
オープンソース
GISソフトウェアの利用者が急速に拡大している。
オープンソース
GISソフトウェアは、従来の専門性の高い領域にとどまらず、ITの幅広い領域で採用されるようになることが予想され、このことが、新しいタイプの機能を実装した新たなソフトウェアを生み出すことになるだろう。
5.おわりに
利用制限の少ないソフトウェアの普及によって、それまで限られた人にしか利用できなかったものが、誰でも(極端な話では、小学生でも)意欲さえあれば利用できる時代になった。
オープンソース
GISソフトウェアの普及は、地理学分野においても、研究者の裾野を劇的に拡大させるビッグバンになりうると思われる。
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