症例は74歳, 男性。 当院を受診する3ヵ月前に
カッターナイフ
を用いて左頸部を切り, 自殺を図るも未遂に終わった。 他院救急部を受診したが, とくに画像検索は行われず, 創部の縫合処置のみを受けた。 その後左を向いて嚥下をするたびに左頸部の痛みが出現するようになったため, 当院を受診した。 頸部単純 X 線写真を撮影したところ, 細長い金属片の残存を認め, 頸部 CT でも金属性の異物を認めた。 早急に手術による摘出をするようすすめたが, 経済的な問題があったため, 当初は患者本人が手術を拒否していた。 その1ヵ月後に手術を決意し, 自殺未遂の5ヵ月後に手術を施行した。 左甲状軟骨外側の肉芽を切開し,
カッターナイフ
と考えられる金属片を摘出して閉創した。 術後に出血や神経麻痺などの合併症は認められなかった。
初診時に頸部外傷後の異物残存を的確に診断するためには, 詳細に問診を取った上で適切な画像検査を行うべきであると考える。
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