本稿では、これまでの移民研究における「トランスナショナル」への議論と関連して、主に日本、韓国のカトリック教会に集まるフィリピン人移住者が形成する社会関係からみえる 2つの追加的な視点について検討する。一つは、フィリピン人移住者たちが移住者先において、フィリピン人コミュニティでの自助活動を通じて、移住先のマジョリティや他国出身の移住者たちと複数エスニシティ・ナショナリティ関係を形成しながらも「フィリピン人」の関係性を拡大することである。そして、もう一つは、その移住先にあるフィリピン人コミュニティ が複数エスニシティ・ナショナリティ関係の形成をさまざまな国や地域で展開しつつ、国境を越えた「フィリピン人」としての接続を構築していることである。本論では、移住先で、「フィリピン人」の集合体が形成され、その関係にあえて移住先のマジョリティや他国出身の移住者たちを巻き込んでいくフィリピン人移住者たちの実践を明らかにする。
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