同一圃場において, ハツニシキ・農林41号の2品種を供試し, 早植栽培による害虫群集の構成推移, 水稲の被害を調査した。
1. 発生した害虫の種類は早植, 普通植ともハツニシキは11種, 農林41号は早植11種, 普通植は10種であつた。
2. 害虫群集の構成と推移は, 初~中期発生害虫は概して早植区, 品種では生育の早い早生のハツニシキに多く, 後期発生害虫はその逆で普通植区, 品種では中生の農林41号に多くなる。
3. 優占種の時期別推移は早植区は両品種とも, アブラムシ・ドロオイムシ→第1化期メイチユウ→カラバエ→第3化期アオムシ・ウンカ類→第2化期メイチユウで, 普通植区ではドロオイムシに始まつて早植区と同一の経過をたどる。
4. 初期のゾウムシ・ハモグリバエ・ヒメハモグリバエ, 中・後期にあらわれるヨコパイ類は優占種とはなり得ない。
5. ドロオイムシ・ハモグリバエ・ゾウムシの被害は早植区では田植後10日目位の5月下旬, 普通植区では6月5日頃から被害がみえ始めるが, ハモグバエ・イネゾウムシの被害は新葉の発生と被害葉の枯死により7月10日頃に消失したが, ドロオイムシの加害め盛期は6月下旬から7月下旬で, 特に早植区では株だえ寸前のものもあつた。
6. ニ
カメイ
チユウの被害は心枯茎はいずれも6月21日頃からあらわれ, 概して早植区のハツニシキに多く, 2化期は逆に普通植区の農林41号に多くなつた。
7. カラバエの被害は品種間・栽培型間に差はなかつた。
8. 水稲の生育は両品種共早植, 防除区の方がまさる。
9. 収量は多いものから早植防除区>普通植防除区>早植無防除区>普通無防除区の順で, これは3.3m
2当り総穂数に比例する。
10. 早植の効率, 防除の効率はほぼ同程度で共に約14%であつた。
11. 収量の増加は早植による穂数の確保, 穂重の増加及び栽培型よりも害虫防除による穂数, 穂重の増加によるものと思われる。
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