幌満
カンラン岩体は多様な変形微細組織と軽微な蛇紋岩化作用で特徴づけられる大規模カンラン
岩体である。同岩体から産する
カンラン
岩は最上部マントルの化学組成と一致することが明らかにされており、マントルプロセスを解明するための研究が多数行われてきた(Takazawa et al., 1999; Ozawa, 2004; Morishita and Arai, 2003など)。しかしながら、岩体全体の変形構造に着目した研究は少なく(Niida, 1975a; Sawaguchi, 2004など)、同岩体の変形・上昇過程については未だよく理解されていない。そこで本研究は、幌満
カンラン
岩体の変形構造と地震波特性を明らかにすることを目的として、
カンラン
石と直方輝石の結晶方位ファブリック(粒径分布、結晶方位定向配列など)の解析とそれを基にした地震波特性の計算を行った。岩体上部から下部にかけて採取した定方位
カンラン
岩試料について、
カンラン
石と直方輝石の平均粒径、構造強度(
J-index)、結晶方位定向配列(CPO)を測定した。
カンラン
石の平均粒径はおよそ500 µm未満、直方輝石の平均粒径はおよそ600 µm 未満であった。
カンラン
石の
J-indexは1.5~4.6程度の値で、岩体下部から上部にかけて値が減少する傾向を示した。一方直方輝石の
J-indexは1.3~3.6程度で、系統的な変化はなかった。
カンラン
石の結晶方位ファブリックとしてE、A、AG の3つのタイプが確認され、岩体下部から上部にかけてこの順での分布を示した。直方輝石の結晶方位ファブリックについてAC、ABC、BCの3つのタイプが確認されたが、
カンラン
石のような系統的な分布は確認されなかった。 Sawaguchi (2004)の結果と合わせて岩体下部でEタイプの
カンラン
石結晶方位ファブリックが確認されたことは、岩体最下部での局所的な水の流入イベントがあったことを示唆する。さらに、
カンラン
石と直方輝石の結晶方位ファブリックと弾性定数から計算された地震波速度を岩体全体で比較した結果、岩体下部から上部にかけてP波速度異方性が減少すること、P波速度の方位異方性が変化することが明らかとなった。引用文献:Morishita, T., Arai, S., 2003. Evolution of spinel-pyroxene symplectite in spinel-lherzolites from the Horoman Complex, Japan. Contributions to Mineralogy and Petrology 144 (5), 509–522.Niida K., 1975a. Texture and olivine fabrics of the Horoman ultramafic rocks, Japan. J. Japan Assoc. Min. Petr. Econ. Geol. 70, 265–285.Ozawa, K., 2004. Thermal history of the Horoman peridotite complex: a record of thermal per-turbation in the lithospheric mantle. J. Petrol. 45, 253–273.Sawaguchi, T., 2004. Deformation history and exhumation process of the Horoman Peridotite Complex, Hokkaido, Japan. Tectonophysics 379, 109–126.Takazawa, E., Frey, F. A., Shimizu, N., Saal, A. and Obata, M., 1999. Polybaric petrogenesis of mafic layers in the Horoman Peridotite Complex, Japan. J. Petrol. 40, 1827–1851.Toyoshima, T., 1991. Tectonic evolution of the Hidaka metamorphic belt and its implication in late Cretaceous –Middle Tertiary tectonics of Hokkaido, Japan. Sci. Rep. Niigata Univ., Ser. E: Geol. Mineral. 8, 1–107.
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