高エネルギーガンマ線(100MeV以上)で明るい天体が100個以上発見され,超高エネルギーガンマ線(100GeV以上)の領域でのガンマ線源の検出も確実になった.この新しく開いた天体観測の窓はこれまで観測されてきた電磁波の中で最も短い波長領域に位置している.中性原子,分子や電離プラズマなどさまざまな状態にある物質が天体での多様な現象を引き起こしている.通常これらの状態は熱的平衡状態で記述されるが,その温度よりはるかに高く素粒子反応が中心的な役割を果たすエネルギー領域での電子や陽子などから(超)高エネルギーガンマ線は放出される.粒子加速機構などの高エネルギー天体現象の研究は従来から宇宙線研究によって行なわれてきたが,その状況にも転機が訪れ新しい展開が期待される.直進するガンマ線は積年の課題である宇宙線の起源を直接的に指し示す.また,高エネルギーガンマ線の観測は活動銀河によって赤方変位z~2以上に拡大され,宇宙線研究の地平も銀河系外へ拡大した.100個を越える天体からの高エネルギーガンマ線とその観測事実は,高エネルギー粒子の関与する過程が決して稀な天体現象ではないこと,他の波長領域での放射を担う過程と密接に関連していることを示唆している.(超)高エネルギーガンマ線の観測が従来以上に電波,赤外線やX線天文学との接点を膨らませつつ発展するものと予想されるが,その実現に向けての一層の努力が必要である.
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