石川県における'加賀太'キュウリの栽培では果実に強い苦味を有するものが多発する.本報では, 苦味果の時期的な発生消長, 着果位置と苦味果発生との関係,葉•果実の加齢ならびに葉中の窒素含量と苦味果発生について調査し, 植物体の栄養生長の強弱と苦味果の発生について考察した.
1.'加賀太'キュウリの半促成栽培では, 苦味果は4月22日前後に収穫した果実のなかに多発した.第一次側枝に着果した果実に苦味果が多発したが, 第二次側枝では苦味果はまったく認められなかった.
2.主枝一本仕立て, あるいは第一次側枝一本仕立てとしたいずれの場合でも, 第一次側枝における苦味果発生率のほうが第二次側枝より高かった.第一次側枝の収穫開始時期は, 第二次側枝より約3週間早かった.
3.本葉の苦味は, 自根の場合もクロダネカボチャに接ぎ木した場合も, 下位節では弱く上位節になるほど強かった.
4.開花時の果実には苦味は全く認められなかったが, その後果長が25cmぐらいまで苦味果の発生率は高く, 25cm以上になるとほとんど認められなくなった.
5.苦味系統のほうが無苦味系統より茎および葉の生長が旺盛であった.葉中の全窒素含量は両系統ともほほ伺じであったが, 硝酸イオン含量は苦味系統では無苦味系統の半分以下であった.
以上より, 齢の進んでいない植物体 (果実が第一次側枝に着果し発育している植物体) あるいは栄養生長が盛んな植物体 (苦味系統) では, 齢の進んだ植物体(果実が第二次側枝に着果し発育している植物体) あるいは栄養生長が低い植物体 (無苦味系統) に比べ,窒素代謝がより活発に作動しているものと推察される.このことが苦味物質の
ククルビタシン
Cの植物体各器官における生合成を促進し, その結果苦味果が多発するのではないかと考えられる.
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