本研究では,バランス・スコアカードの4つの視点を活用し,日本のプロスポーツ
クラブチーム
に対するそれぞれの視点の戦略目標を設定の上,有効な業績評価指標を導出し,ネットワーク分析を用いて,それらの業績評価指標の関係性と重要な業績評価指標を視覚的かつ定量的に把握する新たなアプローチを提示する.バランス・スコアカードでは,経営陣や従業員らに対するインタビューなどによって構築され,4つの視点(財務・顧客・業務プロセス・人材と変革)から業績の評価や戦略をマネジメントするものである.その際には,企業の目標を達成するための「戦略マップ」や評価の尺度となる「業績評価指標」が用いられている.具体的な手順として,日本のプロスポーツ
クラブチーム
を対象に業績評価指標について問うアンケート調査を実施し,業績評価指標間の関係に関する分析を行った.分析手法は,ネットワーク分析の手法を採用した.ネットワーク図の描画によって業績評価指標間の関係性の視覚化,中心性指標の算出によって重要な指標を導出した.その結果,「入場者数及びイベント開催数は,スポーツクラブにとって中心的な指標である.」,「入場者数やファンクラブの新規会員数は収入に結びつく橋渡しの役割を果たしている.」,「ROIの上昇のためには,入場者数を増やすだけでなく,観客席を満席にする必要がある.」ということが分かった.本研究で用いた手法では,業績評価指標の改善の有無で関係性を検討するため,質問紙の回答容易性を保つことができ,財務データを公表していないスポーツ
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からも,データを収集することができたと考えている.以上のような分析手法によって,より多くのデータを収集し,客観的なデータに基づいて業績評価指標の関係を視覚的かつ定量的に把握し議論できるという点で新規性を持っている.
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