アラル海に流入するシルダリア川のデルタに位置するカザフスタン西部クジルオルダ左岸のイリヤソフ農場を主な対象として, 乾燥地灌漑農業における水利用と塩類集積の実態を調査分析し, 灌漑用水の節水の可能性について検討した.さらに, 本地域では最近大きな問題となっている耕作放棄地の増大の原因を分析し, その対策を検討した.その結果, 灌漑効率を途上国の水準に近い60%程度に高めるとすると, クジルオルダ左岸全体で年間約4~6億m
3の節水が可能となることが分かった.また, 耕作放棄地の増大は単に塩類集積問題だけでなく, 農場の経営問題と深い関わりがある.とくに, 大規模機械化農場経営において, 農業機械の更新や部品の供給は不可欠であり, 農業機械の増強が耕作放棄地の増加に対して直接的で有効な手段であることを明らかにした.
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