(1)
Pseudomonas cruciviae var.
ovalisの生産するL-
グルタミン
酸デヒドラーゼによるL-
グルタミン
酸の酵素的脱水反応と,
p-ニトロサルチルアルデヒドとCu
++イオンを触媒とする
グルタミン酸の非酵素的ラセミ化反応とを同時に連続的にラセミグルタミン
酸に起さしめて, L-ピロ
グルタミン酸を経てラセミグルタミン
酸を光学的に活性化する事を試みた.
(2) Cu
++イオンと
p-ニトロサルチルアルデヒドによる
グルタミン
酸の非酵素的ラセミ化は非常に速く,その最適pH, 100°での反応で2時間にして完全にラセミ化される.その最適pHは10以上であり, pH3.0にやや反応率の高いpHがあるが,これはアミノ基の解離に原因するラセミ化と考えられる.この非酵素的ラセミ化では
グルタミン
酸の一部が脱アミノ化されるようでその率は15%程度である.反応最小モル比は
グルタミン
酸,
p-ニトロサルチルアルデヒド, Cu
++イオンが1:0.1:0.1である.又反応速度は10°の温度の上昇で約2倍となる.ピロ
グルタミン
酸に関してはどのような条件でもこの非酵素的ラセミ化反応は起らず,これはピロ
グルタミン
酸がアミノ基を有さず,アルデヒド及びCu
++イオンと錯化合物の形成をせぬ事によると思われる.
(3) L-
グルタミン
酸デヒドラーゼはかニトロサルチルアルデヒド及びCu
++イオンの存在下でもL-
グルタミン
酸の脱水を行いL-ピロ
グルタミン
酸を与える.併しこの場合
グルタミン
酸,
p-ニトロサルチルアルデヒド, Cu
++イオンのモル比は1:0.2:0.1が最適でこれ以外では活性が低下する.
(4) 上記両反応の組合せによるラセミ
グルタミン
酸の光学活性化により,ラセミ
グルタミン
酸はL-ピロ
グルタミン
酸を経てL-
グルタミン
酸に変換される.この活性化反応の最適pHは7.5,最適温度は60~70°,基質濃度は10mg/mlの
P. cruciviaeの凍結乾燥菌体を使用した場合20OmMのラセミ
グルタミン
酸濃度が最も良好であった.この活性化反応での
グルタミン
酸,
p-ニトロサルチルアルデヒド, Cu
++イオンの最適モル比は1:0.1:0.05であった.このモル比はL-
グルタミン
酸デヒドラーゼの反応機構と関係があると考えられる.
(5) ラセミ
グルタミン酸の光学活性化反応により基質ラセミグルタミン
酸の80%程度をL-ピロ
グルタミン
酸を経て,これを加水分解してL-
グルタミン
酸を得るが,この反応液中の
グルタミン
酸は完全にL-異性体で活性化率は100%であるので,この収率80%は
グルタミン
酸の非酵素的脱アミノ反応によると考えられる.それ故本方法による収率は80%程度が限度と思われるので,酵素物な特異的ラセミ化による方法を検討中である.
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