発展途上国の大気汚染状況を, ハイボリューム・エアサンプラー, 原子吸光法およびイオンクロマトグラフといった機器を利用して得られたエアロゾル成分濃度から簡単に評価する手法を提案した.すなわち, 常備の機器によってTSP濃度, 重金属濃度および水溶性イオン濃度を測定する.ついで, NO
3-とSO
42-濃度をX-Y軸, TSP濃度を円の大きさで示すバブル図を描くことによって, エアロゾルからみた大気汚染状況を定性的に表現することが可能であり, 中国の内陸新興工業都市ウルムチ (1月) の大気汚染状況が著しいことを示した.このバブル図では, NO
3-とSO
42-濃度が同一の場合, TSP濃度を示すバブルが重なる欠点がある.そこで, TSP濃度, NO
3-とSO
42-濃度に主成分分析を実施し, 累積寄与率88.9%の第一主成分を利用して, 主成分得点から異なる都市間のエアロゾルからみた大気汚染状況を数値化して比較できることを示した.この結果, 中国東北部重工業都市瀋陽市の12月と8月の大気汚染状態の差異,
ケソン市
における大気汚染の状況を, 過去や現在の日本の諸都市と比較することが可能となった.また, AlをベースとするEF (Enrichment Factor) 法をエアロゾル中の重金属濃度に適用すると, Pb等の起源が類推できた.これらの手法は, 途上国に対する環境技術移転の中で分析技術移転に次ぐ第二段階の分析値の評価・応用に活用が可能と思われた.
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