わが国では一部のまつりにおいて戦国時代の合戦を再現した「模擬合戦」が実施されている。それらの模擬合戦は祭礼の一部、または観光振興として実施されているが、国際的にはローマ時代からの伝統がある戦争再現( リエナクトメント )と同一カテゴリー上に位置づけられるものである。もっとも、国内でも歴史に関わる参加交流型のイベントは稀な存在であることから、模擬 合戦に参加した者の満足度は極めて高い。その中でも歴女と呼ばれる女性らの躍進は著しいものがあるが、彼女たちは合戦を体験型の観光のひとつとして捉えており、武将のキャラクター性などにはあまり関心がないことが判明した。
一方で、主催者側は合戦コンテンツを有効に活用しているとは言えず、観光施策や地域振興としての広がりには欠ける。また資金やノウハウなどが必要なため、実際に実施できている地域は少数に留まった。ただし、歴史ブランド力に劣る地域においても運営や募集、広報の工夫により、人気を集められる模擬合戦を開催できる可能性が高いことが判明した。現状として、実際の戦場ではなくても評判をよぶ模擬合戦を実施できていることは、観光資源に乏しい地域の光明となる。
さらに戦争再現の先進国であるアメリカの南北戦争を再現したイベントと比較した結果、強烈な「異日常」体験としては共通するものの、その規模や目的、参加者の意識は大きく異なることが判明した。特にわが国はアメリカのような「生きた歴史」を体験型コンテンツとして教えることができる人材に欠如している点で違いが見られた。
抄録全体を表示