多胚性の形質を持つ温州ミカンにカラタチを花粉親として交配した. 胚は受粉後90日, 120日, 140日, の未熟な種子から摘出した.
分雑した胚は型状と大きさによって, 次の5段階に分類した. Stage I……球状胚 (0.1mm以下), Stage II……初期心臓型胚 (0.1~0.3mm), Stage III……中期心臓型胚 (0.3~0.4mm), Stage IV……後期心臓型胚(0.4~0.5mm), Stage V……魚雷型胚 (0.5mm以上).
これらの胚をMSの培養液およびこれにオートクレイブしない20%キュウリジュースを加えた培養液を含む寒天培地上で生育させた.
受粉後90日と120日胚において, Stage Vの胚を除きキュウリジュースの添加は胚の発育および子葉分化数の増加に対して著しい効果を示した.
一方, 140日胚ではそのような効果はあまり認められず, 逆に, キュウリジュースの添加が根の分化や生長を阻害した. このことから, キュウリジュース中に子葉を分化, 発育させる要因と根の分化, 生長を抑制する要因が含まれていることが推察できる.
受粉後90, 120日の心臓型胚を培養するには次のような培地に, 1か月間隔で継代培養するのが良いことがわかつた.
(1) 20%キュウリジュースと3% Sucrose を含むMS培地に幼胚を植え付ける.
(2) 3% Sucrose を含むMS培地に胚を継代培養する.
(3) 1.5% Sucrose を含むMS培地に胚を継代培養する.
(4) 次の1か月は試験管より取り出し, バーミキュライトを入れた鉢に実生を植え付ける.
交雑実生の獲得率は種子当り約40~60%であり, それらの胚は Stage IVからVの胚の中に含まれていた.
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