マツダのブランドエッセンスである「走る歓び」を実現するために,エンジン性能に寄与する複雑な製品形状を高精度に成形することは極めて重要である。しかし,シリンダーヘッド素形材(アルミ鋳造で成形した鋳物)の鋳造に用いる薄肉砂型は熱影響による変形が大きく,製品形状成形の難易度が高い。素形材の寸法精度を高めるためには,この変形を抑制し,最低限の変形を見込んだ寸法であらかじめ金型を補正しておく必要があるが,そのためには変形を精度よく予測する技術が必要である。そこで,砂型熱変形の発生メカニズムを明らかにし,実態計測に基づく変形モデルの深化により,高精度な変形予測技術を確立した。
今回,この技術を用いて,製品開発初期段階において,砂型の熱変形を抑制する鋳型構造及び寸法補正を設計するモデルベース開発プロセスを構築した。SKYACTIV-Xシリンダーヘッドの量産準備(生産技術領域での量産に向けた,製品機能と生産性を向上させるために,製品形状や生産条件の検討・最適化,及び設備や金型を準備)にこれを適用することで,製品機能と生産性の両立を果たしたので,本稿ではこの取り組みについて報告する。
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