迅速に腸管出血性大腸菌 (EHEC) O157感染症の診断をするための手段として, イムノクロマトグラフィーの原理により糞便から直接大腸菌O157LPS抗原を検出するキット (Quix
TM) の有効性を検討した.
臨床分離株である大腸菌0157の純培養菌を用いて検出感度を調べた結果, 5×105CFU/ml以上で陽性を示した.また臨床検体64症例の糞便を用いて培養法と比較したところ, 陽性一致率は95.0%(19/20例), 陰性一致率は86.4%(38/44例) であり両者間の一致率は89.1%(57/64例) であった.培養法が陽性であり本法が陰性であった1例については, 検体中の菌数が本法で検出できる感度以下であった.また培養法が陰性で本法が陽性であった6症例中4症例は, 大腸菌O157LPS抗原に対するIgM抗体が陽性であったことから, 大腸菌0157感染患者であり, 既に抗生物質が投与されていたため培養法の結果と乖離したと考えられた. また1症例は
Salmonella urbana (O30
130
2) が検出された.本菌のO30
1抗原は大腸菌O157抗原と同一であることから本法では交差反応がおこり偽陽性となった.
本法をELISA法による大腸菌O157LPS抗原検出キットと比較した場合, 陽性一致率は100%(11/11例), 陰性一致率は82.1%(23/28例) であり, 両者間の一致率は87.2%(34/39例) であった.
本法は, 直接糞便検体から大腸菌O157LPS抗原を約5分で検出し, 操作も簡便であるため, 一次医療機関や外来患者またはベッドサイドにおける迅速診断法として有用であると考えられた.
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