本研究では,Russellの快と覚醒の2次元モデルと,快と覚醒の関係を説明したBerlyneの対比の特性と覚醒モデルに基づいて,パブリックアートが都市景観の感情的評価に与える影響について検討することを目的とした。大学生・大学院生36名が,パブリックアートと背景を実験的に組み合わせて作成したパブリックアートを含む都市景観の画像20枚に対して,快,覚醒,および背景とパブリックアートの適合の程度について評定を行った。分散分析の結果,快と覚醒の両項目において背景とパブリックアートの交互作用が有意であったものの,パブリックアートの主効果の効果量が相対的に大きく,パブリックアート自体の性質が景観の覚醒および快評価に与える影響が大きいことが示された。さらに主効果の多重比較の結果から,各パブリックアートによって景観の感情的評価に与える影響の度合いに差が見られ,作品の選定によって景観全体の感情的評価を操作できる可能性が示唆された。他方で,背景とパブリックアートの適合と快の間に,有意な中程度の相関関係が認められた。パブリックアート自体の質に加えて,背景とパブリックアートの適合もまた,景観の快評価に影響する要因であることが示唆された。最後に,本研究のまとめと限界が議論された。
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