60歳以上の100剖検例の内頚動脈
サイフォン
部の石灰化について, 放射線学的ならびに組織学的に検索し, 同部の石灰化と脳の動脈硬化, 脳の血管性病変との関連を検討し, 以下の成績を得た.
1)
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部の石灰化は対象例の80%に認められた. 点状石灰化を軽度, 塊状あるいは大塊状石灰化を高度石灰化とすると, 高度石灰化は41%に認められ, 加齢とともに頻度が高くなる傾向がみられた. 石灰化の性差および左右差は認められなかった.
2)
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部高度石灰化は高血圧者に有意の高頻度でみられた. が, 生前の血清総コレステロール値との間には有意の関係が認められなかった.
3)
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弯曲部における石灰化は内腔凹面に強く, 内膜の肥厚は内腔凸面に強い傾向がみられた.
4)
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部に高度石灰化のみられる例では, 石灰化が無いか軽度の群に比し, 内頚動脈の intracranial portion および脳動脈に高度狭窄を示す頻度が有意に高かった.
5) 脳に血管性病変を有しないものは, 石灰化がないか, 軽度の群に有意に多かった. 梗塞性病変, ことに中小の脳梗塞は, 高度石灰化群に有意に多くみられた. 脳出血と
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部石灰化の程度との間には有意の関係は認められなかった.
6)
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部に塊状または大塊状の高度石灰化を示すものは全て, 生前の頭部単純X線写真で検出されていた. しかし, 点状石灰化の場合には生前, 検出されたものは少なかった.
7) 以上の所見より,
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部の石灰化は脳梗塞の risk factor の一つになり得ると推定され, 頭蓋単純X線写真における
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部石灰化像の検出は, 重要な臨床的意義を有すると結論される.
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