本研究では, 中京圏を事例に, 1990年以降における大店法の運用緩和に伴う量販チェーン各社の出店行動の変化について, 域内に既存店舗の集積をもつユニー, ジャスコの両社を先発チェーン, 既存店舗の集積をもたない他社を後発チェーンにわけ, その差異を分析した.大店法の運用緩和に伴う中京圏における量販チェーンの出店行動は, 大幅な出店件数の増加と売場面積の大規模化, 出店地域の広域化の3点に特徴づけられる.また, 売上高からみた競争では, 愛知県内の都市部を中心とする地域での先発・後発のチェーン間によるものと, その周辺部での先発チェーンの新設・増床店舗と既存店舗間によるものに大別される.同時に先発チェーンを中心に, 中小規模店舗の閉鎖および増床を通じて店舗配置が再編成されている.また, ユニー, ジャスコならびにマイカルの3社における出店戦略を検討したところ, 既存店舗の集積をもつユニー, ジャスコは, 最寄性の強い食料品の販売を強化することで, 平日における近隣からの顧客を吸引しようとしている.これに対して, 既存店舗の集積がないマイカルは, 休日の非日常的な消費を意識しつつ, アップグレード化された商品構成と, 大規模娯楽施設の併設による複合型ショッピングセンターの開発を通じて, 先発チェーンとの差別化を図っている.このように, 大店法の運用緩和は, 量販チェーン間の出店戦略の差別化を進めるとともに, 地域内における売上高については量販チェーン各社への上位集中を促している.
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