マイクロパンクチャー法を用いて, ラットの一側完全尿管閉塞腎の近位尿細管に於ける再吸収機構の解折を行った.
再吸収機構を知る目的で, 基底外側膜電位 (E
Mperi), 細胞内K
+活量 (a
iK), そして管腔内電位 (E
MTT) をK
+感受性二連型微小電極を用いて測定した. コントロールのE
Mperi, a
iKは各々-68.7mv, 81.2mEq/
lであった. 閉塞1日, 3日, 1週間と閉塞期間の延長に従いE
MPeri, a
iKは減少した. しかしコントロール及び閉塞腎のa
iK値は電気化学平衝以上であった. このことは, 閉塞腎のNa-K pump 活性はコントロールに比較し低下してはいるが, その活性は維持されていることを示す. E
MTTは尿管閉塞により有意な変化を示さなかった. 次に Split Oil Drop 法を用いて, コントロール及び閉塞3日目の腎に於ける近位尿細管の水再殊量 (J
VL; nl/secmm) を Ringer 液とNa
+-free 液 (Choline Cl液) を用いて測定した. Ringer 液を用いた場合の閉塞腎のJ
vLは0.0065 (コントロールの22%) で, J
VL値はE
Mperiに依存した. 一方Na
+-free 液を用いた場合には, コントロール, 閉塞腎ともにJ
VLはゼロであった. 以上の結果から, 閉塞腎近位尿細管では, 正常腎と同様に, Na-K pump によるNa
+の能動輸送と, これに伴う水再吸収が行なわれていることが示唆された. そして, この様な近位尿細管に於ける水再吸収は, 閉塞腎の糸球体濾過機能の維持に重要な役割をはたすと考えられた.
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