いまもヨーロッパのいたるところに,古代ローマの刻印が,強弱さまざまな度合に残っている.ローマ的要素は,キリスト教的要素とならんで,ヨーロッパを構成する二大要素であろう.
まずライン地溝帯とその周辺にフィールドをかぎり,古代ローマ時代の文化景観の一部を復原する.つぎにその復原の内容を,古代ガリアや日本・中国などの既往の研究成果と比較対照することによって,古代における地域一般の秩序を追求してみたい.とくに本稿では,古代のガウ(Gau)や郷クラスの「基礎地域」を包む,より上位の単位たる部族領域や,それを母胎として画定されたキヴィタス (civitas) や国,さらにより広域の諸領域
1)に視点をすえる.これは「基礎地域」の上部構造に関する研究というべきものであるが,以下のように,東西の古代世界に共通する地域的秩序が摘出できた.
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