トレニア属は40種からなる植物属であるが, 園芸品種の育成にはTorenia fournieriのみが関わっており, 品種の遺伝的多様性が低い問題点を持っている. 本研究では, トレニア品種の遺伝的多様性を拡大することを目的とし,
T. fournieri(TF),
T. glabra(TG),
T. asiatica(TA),
T. concolor(TC),
T.baillonii(TB),
T. sp-1(SP1),
T. sp-2(SP2), T.‘Summer Wave’ (
T.fournieri×
T. sp-1)(SW)を用い, 核リボソームDNAのITS領域(5.8S nr DNAを含む)の塩基配列に基づいて種間の類縁関係を明らかにすると共に, これらの種間でのダイアレルクロスを行い交雑親和性を調査した. 核リボソームDNAのITS領域の全塩基配列から系統樹を作成した結果, TA, TC, TFからなるクレードとTG, TB, SP1, SP2およびSW で構成されるクレードにわけられた. ダイアレルクロスの結果, TC×TG, TC×SP2, TG×TC, TG×SP2, SP2×TGの組み合わせで高い交雑親和性が認められた. 同一クレードに属するSP2とTGとの交雑個体ではTGの形質が優性に発現され, 異なるクレードに属するTCとTGおよびSP2との組み合わせでは, 花形が両親の中間の形質を示した. 同一クレードに属したTG, TB, SP1, SP2との交雑においても結実や稔性種子の形成が認められ, 同一クレードに属する種間での交雑親和性が確認できた. TF, TA およびSW は一部を除いて他の種と交雑親和性を示さなかった. TB×TFで1個体の交雑個体が得られ, TFとは異なる花形や花色を持つ交雑個体が得られた.
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