放水路にすべて圧力がかかつた状態で水車運転が行われている場合にも, 水車使用水量の変動により生ずる放水路サージチャンバーの下降
サージング
時には, 一般に放水トンネル内にも自由水面が侵入してゆき, そのような場合の
サージングの計算には通常の導水路サージタンクのサージング
の基本式をそのままは適用することができなくなる。この場合の放水路内の
サージング
現象は複雑な波動現象と考えられるが, 本論文においてはそのような複雑な波動現象としての取り扱いを避け, 従来の導水路サージタンクの
サージング
の基本式を, 若干の仮定により修正して, そのような場合においても成立つべき基本式を誘導した。この新らしい基本式を適当な方法によつて積分することにより, 放水路サージチャンバーの
サージング
が解析される。特に水車発電機の負荷急遮断時の下降サージにともない, その揺れ戻しの段階において生ずるサージチャンバーの上昇サージは, 放水路のサージチャンバーにおける避け得ざる一つの最上昇サージを与えるものとして, この揺れ戻しの最上昇サージを計算上の注目すべき一つの対象と考えた。
この基本式の妥当性の検討のために実験を行い, この基本式の数値積分により求められる
サージング曲線と実験によるサージング
曲線との比較を行つた。これによれば両者の一致の度合はほとんど十分なものであつて, 新らしい基本式は放水路サージチャンバーの
サージング
計算には, 十分の信頼度をもつて使用しうるものであることが示された。
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