ポリ
シアル
酸は、生物学上重要な酸性9単糖である
シアル
酸が重合した多糖であり、主に、α(2,8)またα(2,9)重合体1,2また、それらの交互重合体3が報告されている(図1)。特に、α(2,8)ポリ
シアル
酸は、脳神経細胞表面に存在し、神経形成に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。1)さらに、近年、ポリ
シアル
酸が脳由来神経因子(BDNF)に結合し、脳内のキャリアーとして機能していることが明らかにされている。2)ポリ
シアル
酸をハプテンとして用いて合成した抗体(ポリ
シアル
酸抗体)が、8量体以上のα(2,8)
シアル
酸1aを認識することから、これら糖鎖をポリ
シアル
酸と呼び、3〜7量体
シアル
酸(オリゴ
シアル
酸)1bとは区別している。そのため、
シアル
酸8量体はポリ
シアル
酸が形成する特異な高次構造の最小単位であると考えられている。そこで、ポリ
シアル
酸が形成する高次構造の解明およびポリ
シアル
酸の基盤とした生体機能性分子の創製をために、構造が明らかで重合度が制御された構造の明らかな(2,8)オクタ
シアル
酸(ポリ
シアル
酸)およびその類縁体の合成法の開発が求められている。我々は、これまで化学合成によるα(2,8)
シアル
酸重合体の合成を検討してきた。その結果、4,5位に環状カルバメート基を有した
シアル酸を用いるシアル
酸オリゴマー合成法(第一世代)の開発に成功した。3)4,5位に環状カルバメート基は、
シアル
酸のグリコシル化に対する反応性およびα選択性を向上させるとともに、糖受容体となる8位水酸基の求核性の向上にも寄与する。その結果、世界で初めてα(2,8)テトラ
シアル
酸4の化学合成を達成した。しかしながら、糖鎖伸長とともに、糖受容体の反応性が低下し、グリコシル化収率の大幅な低下がみられたため、それ以上の多量体(ポリ
シアル
酸)の合成は困難であった。本研究では、環状保護基により立体配座が制御された側鎖を有する
シアル
酸を用いるα(2,8)オクタ
シアル
酸(ポリ
シアル
酸)の化学合成について報告する。
図1オリゴ・ポリ
シアル
酸
図2に第二世代の
シアル
酸オリゴマーの合成戦略を示す。本合成法では、4,5位にN-アセチル環状カーバマートおよび7,9位に環状炭酸エステルを有する
シアル
酸糖供与体6と糖受容体7のグリコシル化を基盤としている。得られたグリコシド8は8位の保護基を脱保護することにより、同様な糖受容体7へと変換できる。これを繰り返すことにより、
シアル
酸のオリゴマーおよびポリマーを合成する。その際、N-アセチル環状カルバマートは、
シアル
酸糖供与体の高いα選択性の発現に寄与す
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