これまで著者らのところで行なってきた,放射性同位体を用いる各種微量不純物の挙動の研究結果から,塩化ヒ素(III)および亜ヒ酸を精製するためのもっとも効果的で,かつ合理的な方法の組合せ方がわかったので,つぎにこれらの中間体を還元して高純度の金属ヒ素をうる方法について検討した。
亜ヒ酸の炭素還元法においては,620℃以上の温度に加熱した炭素層を通して亜ヒ酸の還元を行なう気相法によって,ヒ素の還元収率は99%以上の値がえられることがわかった。塩化ヒ素(III)の水素還元法においては反応管の温度800℃ 以上,水素混合比2当量以上においてヒ素の還元収率は99%となった。また,これらの還元反応では,還元析出する部分の温度を300~400℃の範囲に保持しておけば,えられるヒ素はほとんど全部結晶状となる。この方法でえられた試料を外国製の公称
シックスナイン
のヒ素と,発光分光分析により比較した結果では,純度はややすぐれていることを示し,塩化物の水素還元法は高純度の金属ヒ素をうるための適当な方法であると認められた。
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