スギカミキリ成虫の配偶行動を明らかにするため,林内のスギ生立木に雌および雄を樹当りの密度を違えて放逐し,雄の雌探索,マウントおよび交尾行動を個体別に24時間連続して観察した。
1) 雄と雌との遭遇には,雄が歩行中に雌に遭遇する場合と静止中の雄に歩行中の雌が遭遇する場合とが認められた。低密度区においても雄は雌に24時間内に1回以上遭遇する可能性があり,優れた雌探索能力を有することがわかった。
2) 高密度区においては過密度のため,マウントあるいは交尾が他個体の干渉により妨害される場合があった。マウント時間ならびに交尾時間はいずれも短く,前者は観測個体の76%が10分以内,後者は82%が5分以内であった。
3) 雌および雄は多回マウントおよび交尾を行った。多回マウントおよび交尾は1個体との間だけでなく,複数の個体間においても発生した。
4) 配偶行動の発生量には日内変化が認められ,おもに日没から日の出までの間に集中して発生した。
5) 雄間では2種類の闘争が確認された。その一つは単独雄間の闘争,他の一つは単独雄とペア形成雄間の闘争であった。闘争の発生頻度と強度はいずれも後者のほうが前者よりも大であった。
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