いつの時代も,次の世代を担う若者が心身ともに健やかに育っていくことはわれわれ大人の願いである.しかし,近年,少子化が急速に進む中,不登校,いじめ,学級崩壊,摂食障害,児童虐待,援助交際など,子どもの心の問題が急増し,多様化,複雑化,低年齢化している.本稿では,最近の40年ほどのわが国の児童,思春期の心の問題をめぐる時代的変遷を概観し,4つの方向性を明らかにした.すなわち,無気力,幼稚な自己愛,衝動コントロールの悪さ,心身症への傾斜である.また,診察室からみた現代の親子関係の特徴として,(1)今の親子関係は,ともすれば見通しを失いやすく,不安定さがみられる,(2)援助を求めることを知らない,(3)心の傷の癒し方を知らない,(4)生きていることの誇りをもてないでいる,ことを明らかにし,その対策を考察した.
抄録全体を表示