I 研究目的
地球温暖化(IPCC,1996;2001;2007)によるSSTの上昇傾向はStrong et al.,(2000)によっても確認されているが,上昇率が最も高い海洋は太平洋海域である(大和田・井上,2002)。特に冬季における亜熱帯高圧帯領域は,西太平洋,および西大西洋に(500hPa面)に現れる傾向があり,特に西太平洋付近に顕著に現れる(大和田・石川,2002)。したがって,中緯度を流れる東西流変動に及ぼす影響が懸念される。そこで本研究は,北半球における冬季の熱帯内収束帯(ITCZ)の緯度的・経度的位置をOLRから確認し,西太平洋熱帯海域に形成される亜熱帯高圧帯との関係から亜熱帯
ジェット気流
,および寒帯前線
ジェット気流
の北上との関係について明らかにする。さらに,それらの
ジェット気流
によって発生した温帯低気圧の移動経路の変動から日本海低気圧と南岸低気圧の接近・合体による異常発達のメカニズムを解析しようとするものである。
II 資料および解析方法
SSTは,NOAA/NCEP EMC CMB GLOBAL のSea Surface Temperature(SST)を用い,また,亜熱帯高圧帯領域面積は, NCEP/NCARの再解析データを使用した。亜熱帯高圧帯領域は,大和田・石川(2002)の解析結果から,500hPa等圧面高度場の5,870m以上の領域を測定した(1982~2007年)。さらに,熱帯内収束帯(ITCZ)の南北振動は,NOAA/NCEPの地球表面から放射される赤外線強度OLR(Outgoing Longwave Radiation)を用いて確認した。
III 結 果
冬季は,夏季に比較してSST高温領域と亜熱帯高圧帯領域との間に明瞭な関係が得られなかった。これは,夏季と冬季のITCの位置が異なるからであり,SITCが南半球に位置している冬季はハドレー循環の上昇気流が全て北半球の亜熱帯高圧帯形成に関係しているとは言いがたいからである。しかし,南半球も含めたSST29℃以上の領域面積は拡大傾向にあり,亜熱帯高圧帯領域も拡大傾向にあることが判明した。そこで,亜熱帯高圧帯領域面積の典型的な拡大年と縮小年を選出し,温帯低気圧の移動経路を調べた。その結果,亜熱帯高圧帯領域面積の拡大は,亜熱帯
ジェット気流
,および寒帯前線
ジェット気流
の緯度的位置の北上とトラフの経度的位置の変動によって温帯低気圧の移動経路を北上させることが明らかとなった(図1)。さらに,それらの
ジェット気流
が接近し,大気擾乱が活発化して低気圧が異常発達する傾向にあることが判明した(図2,図3)。
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