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クエリ検索: "ジェントリフィケーション"
674件中 1-20の結果を表示しています
  • *藤塚 吉浩
    日本地理学会発表要旨集
    2011年 2011s 巻 329
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/24
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では、世界的文献検索ツールであるスコーパスにおいて、題目、または、キーワード、要旨に
    ジェントリフィケーション
    が含まれる論文数の推移について調べた(図1)。スコーパスでは、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語などの欧米系言語の論文だけでなく、『地理学評論』や『人文地理』のように英語の題目・キーワード・要旨のある各国語の論文が収録されている。スコーパスの検索(2011年1月18日閲覧)では、
    ジェントリフィケーション
    に関する論文の総数は800本を超えた。景気後退により
    ジェントリフィケーション
    の失速した1990年代半ばには論文数は減少したが、21世紀に入り
    ジェントリフィケーション
    研究は急増している。
     21世紀の
    ジェントリフィケーション
    研究の増加について、論文の掲載雑誌の学問分野のうち、論文数が10本以上のものを分析した(図2)。
    ジェントリフィケーション
    研究は地理学が中心的な学問分野であるが、21世紀になると都市学における研究論文が大きく増加した。都市学の学術雑誌とは、Urban StudiesやInternational Journal of Urban and Regional Research、Urban Affairs Reviewなどである。21世紀の都市学における
    ジェントリフィケーション
    研究の論文数が多いのは、2002年9月にグラスゴー大学都市学部により「近隣上向化の軌跡―新世紀の
    ジェントリフィケーション
    ―」のワークショップが開かれ、16ヶ国の様々な専門分野の研究者によって議論されたが、その一部が2003年にUrban Studiesの特集号として掲載され、都市学における研究をさらに進展させたためである。
     21世紀の
    ジェントリフィケーション
    研究の論文数は、地理学が119本、都市学が120本と拮抗しているが、題目に
    ジェントリフィケーション
    の含まれる論文数では、地理学が58本、都市学が77本である。題目に
    ジェントリフィケーション
    を含まない地理学の論文では、住宅やジェンダー、景観に関するものが多い。これらは、都市地理学の研究動向を分析した阿部(2007)の観点では、「都市で」
    ジェントリフィケーション
    に関連して研究したものである。題目に
    ジェントリフィケーション
    を含まない都市学の論文では、再開発やソシアルミックス、階級など、「都市を」研究するものが大半である。
     題目に
    ジェントリフィケーション
    を含む地理学の論文では、
    ジェントリフィケーション
    の現象の変質や、旧社会主義国や新興工業国の都市といった発現地の世界的拡大、1990年代の景気後退後に積極的に推進された先進資本主義国の都市再生などに関して研究されている。
     現象の変質については、
    ジェントリフィケーション
    の循環的発現から分析されるとともに、近年では新建設の
    ジェントリフィケーション
    が注目される。新建設の
    ジェントリフィケーション
    は、工場跡地や放棄された土地、住宅以外の建物が取り壊されたところに新たに建設されたものであるため、居住者の立ち退きは伴わず、侵入と遷移の観点には適合しない。新建設の
    ジェントリフィケーション
    とは、デビットソン・リーズ(2005)によれば、資本の再投資と高所得者による地域の社会的上向化、景観の変化、低所得の周辺住民の直接的・間接的な立ち退きを伴うものである。
     
    ジェントリフィケーション
    の発現地は、上記の工場跡地や商業地、郊外、さらには村落にまで拡大している。本報告では、現象の変質とともに拡大してきた
    ジェントリフィケーション
    研究のフロンティアについて考察する。
  • 世界のジェントリフィケーションを考える
    *藤塚 吉浩
    日本地理学会発表要旨集
    2010年 2010f 巻 S1202
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
     21世紀にはいり、グローバリゼーションの影響を受けた地区再生ダイナミクスが、都市の内部構造を大きく変えつつある。本報告では、地区再生ダイナミクスのひとつである
    ジェントリフィケーション
    をとりあげ、世界の都市の変化とその研究動向について考える。
     研究史上最も早くグラスが
    ジェントリフィケーション
    に言及したのは、1964年のことである。1960年代以降
    ジェントリフィケーション
    の活発な時期は3回あり、これらはハックワースとスミス(2001)の段階論において三つの波として示されている。1973年までが第一の波であり、
    ジェントリフィケーション
    は西ヨーロッパとアメリカ合衆国北東部の都市に点在してみられる。1970年代後半には、不動産価格の下落を利用して、投資されない地区の大半を開発業者や投資家が購入した。1970年代末から1980年代にかけて第二の波が起こり、世界都市では資本の回帰によって
    ジェントリフィケーション
    の発現する地区は複数みられるが、世界都市よりも規模の小さい都市においてもみられるようになった。住民の立ち退きが政治的な問題となるのもこの期間の特徴である。1990年代前半は世界的な景気の後退期であり、
    ジェントリフィケーション
    はゆるやかになった。1990年代後半以降には第三の波が起こり、
    ジェントリフィケーション
    は大規模な資本と結びつき、大規模開発業者は政府の支援を受けて、地区全体に及ぶようになった。新自由主義の政府は、市場における
    ジェントリフィケーション
    の規制者というよりはむしろ斡旋者であり、
    ジェントリフィケーション
    は世界の資本と文化の循環に接続して、一般化される状況にある(リーズほか 2008)。
     
    ジェントリフィケーション
    が当初の状況と異なり変質してきているのは、都市の内部構造においても確認できる。スミス(1979)は、投資が行われずに衰退したインナーシティの不動産市場へ、資本が回帰して
    ジェントリフィケーション
    を惹起するという地代格差論を提示した。この地代格差は、都心近くに生じる地価の谷へ資本の回帰を誘発させる。地価の谷は、徐々に都心から投資の行われない地区へと外側に移動する。ニューヨーク市では、都心より離れたこれまで
    ジェントリフィケーション
    のみられなかった地区において現象が起こっており、地価の高低は投資されないところと、再投資されたところにおいてモザイク状になることをハックワース(2002)は示した。一方、ニューヨーク市のかつて
    ジェントリフィケーション
    により再生された地区では、より裕福なジェントリファイアーが来住しており、これをスーパー
    ジェントリフィケーション
    としてリーズ(2003)は示した。
     
    ジェントリフィケーション
    の発現は、ヨーロッパや北アメリカ、オセアニアにとどまらない。1990年代後半には、資本主義に移行した東ヨーロッパ諸国においても
    ジェントリフィケーション
    は発現している。リーズほか(2008)は、世界の新聞の見出しを分析した結果、21世紀に入って
    ジェントリフィケーション
    を取り上げている件数が増加しており、なかでもワールドニュース、アジアのニュースが増えており、世界的に
    ジェントリフィケーション
    がニュースとしてとりあげられている。この動向は、アトキンソンとブリッジ(2005)編『世界的文脈における
    ジェントリフィケーション
    』に所収された論文の研究対象都市がイギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ドイツ、スペイン、イタリア、ギリシャ、チェコ、ポーランド、トルコ、日本、ブラジルにあるという、世界的な研究動向からも明らかである。インナーシティの再投資についての国ごとに正確に比較できるデータは存在しないが、グローバリゼーションにより起こる
    ジェントリフィケーション
    を比較検証することは重要な研究課題である。
     1990年代に
    ジェントリフィケーション
    に関する研究成果は拡大したが、その大半は地理学者の貢献によるものである。リーズほか(2008)は、
    ジェントリフィケーション
    についてのパースペクティブに関して、理論やイデオロギーは異なるが、方法論は等しく地理学に帰することができるとしている。リーズ(2000)が主張するように、今後は
    ジェントリフィケーション
    の地理学を構築することが重要となってくるであろう。
  • *原口 剛
    日本地理学会発表要旨集
    2005年 2005s 巻
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    会議録・要旨集 フリー
    1.発表の目的 欧米においては、空間論的転回と総称されるディシプリンを超えた知的潮流のなかで、都市が固有の認識対象としてクローズアップされ、批判的都市論が次々と姿を現しつつある。本発表は、欧米における都市論の全体像に、多少なりとも迫ることを目的とする。しかし、都市論といってもその対象は幅広く、ともすれば論点が散漫になりかねない。したがって、本発表ではとりわけ
    ジェントリフィケーション
    論の展開過程に着目する。対象として
    ジェントリフィケーション
    を取り上げる理由は以下のとおりである。第一に、欧米における
    ジェントリフィケーション
    論の展開には、四十年以上にわたる蓄積があり、それは社会階層論、不均等発展論、都市文化論がせめぎあう重要なアリーナであったということ。第二に、とりわけ1990年代に拡大をみせた
    ジェントリフィケーション
    は、かつて近代都市における郊外がそうであったように、現代都市そのものを定義するような中心的現象となっている、ということである。2.
    ジェントリフィケーション
    論と都市表象発表の下敷きとして、以下では
    ジェントリフィケーション
    論の論点をおおまかに要約しておく。藤塚(1994)で明快に整理されているように、
    ジェントリフィケーション
    論にはConsumer side theory/Supply side theoryという二つの理論的潮流がある。Consumer side theoryの第一の論点は「誰がジェントリファイアーなのか」という点、つまり
    ジェントリフィケーション
    の消費者の属性にあり、そうした論点は、社会階層論と接点をもつ。社会階層論によれば、後期資本主義社会は「新中間層」と呼ばれる階層が台頭によって特徴づけられる。そうした階層の人々の居住地選択やライフスタイルの嗜好(郊外に対する、インナーシティへの)が、
    ジェントリフィケーション
    の過程のなかで決定的な役割を演じている。一方でスミスに代表されるSupply side theoryは、
    ジェントリフィケーション
    を地理的不均等発展のひとつとして捉え、地代格差論を骨子とした供給者の動向を理論的主軸に据える。すなわち、インナーシティにおける投資の不在により起る地価の下落が発生し、望ましい土地利用を仮定した際の潜在的地代とのあいだに格差が生じる。そこにより高い利潤を求める金融資本が投資先としてインナーシティを見出し、郊外に流れていた資本がインナーシティ近隣へと回帰するのである。 以上の理論的潮流は
    ジェントリフィケーション
    を、(それぞれ異なった視角ではあるが)「郊外/インナーシティ」という関係性のなかで捉える、という点では共通している。Mills(1993)は、
    ジェントリフィケーション
    の地理的想像力(神話)のなかでは、「郊外/インナーシティ」という差異的表象が機能している、と指摘する。したがって都市の地理的表象(そしてそれを生み出す文化生産者の役割)は、
    ジェントリフィケーション
    の過程においては決定的な重要性をもつ。
    ジェントリフィケーション
    論のなかで「郊外/インナーシティ」という関係性がどのように位置づけられ、また捉え返されたのか、これが、本発表の第一の論点である。 これを踏まえて第二の論点は、
    ジェントリフィケーション
    論から、どのような都市表象が生みだされたのか、という点を検討する。80年代までの理論的蓄積を梃子として、
    ジェントリフィケーション
    論からは、Emanicipatory City、Rrevanchist Cityという真逆の都市表象が生まれた。文献(ここでは、とくに要旨で触れたもののみを挙げている)藤塚吉浩 1994.
    ジェントリフィケーション
    !)!)海外諸国の研究動向と日本における研究の可能性. 人文地理46: 496-514.Caulfield, J. 1989. Gentrification and desire’ Canadian Review of Sociology and Anthropology 26: 617-32.Mills, C, A. 1993. ‘Myths and meanings of gentrification’, in Place/Culture/Representation、 Eds J S Duncan, D Ley, Routledge、 London, pp 86-96.Smith, N. (1996) The new urban frontier: gentrification and the revanchist city. London and New York: Routledge.
  • *黄 幸
    日本地理学会発表要旨集
    2014年 2014s 巻 808
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    欧米における四十年以上にわたる研究の蓄積および都市における諸現象の展開に伴って、
    ジェントリフィケーション
    という用語の定義は変動した。さらに近年では、グローバル化と新自由主義の影響を受けて、
    ジェントリフィケーション
    は欧米以外のグローバル・サウス国家へ拡大し、中央・地方政府の政策と強く関連づけられるようになった。そこで本発表は、
    ジェントリフィケーション
    における定義の変動過程を整理し、現在における都市の発展状況に適応する広義で柔軟な定義を提案する。それに基づいて中国の都市における
    ジェントリフィケーション
    の現状を分析する。  
    ジェントリフィケーション
    は、1960年代にイギリスの社会学者Glassによるロンドンのインナーシティにおける近隣変化に関する報告の中で最初に確認された。労働者階級の居住地へ中間階級が徐々に来住し、老朽化した住宅が更新・修復され、この過程で元々住んでいた労働者階級は立ち退きさせられ、全般の社会的性格が変容することが報告されている。その最初の記述は現在「古典的
    ジェントリフィケーション
    」と呼ばれる。その後、1970年代から1980年代にかけて欧米における研究者たちは、
    ジェントリフィケーション
    の起因について、「消費サイド」と「生産サイド」という二つの理論をめぐって論争した。前者は、D. Leyが中心的論者であり、産業構造の変化による中間階級の増加を背景として、ジェントリファイヤーたちが生活スタイル・建築への好みの志向によってインナーシティへ移転することが原因であるとされた。後者は、N. Smithの地代格差論が中心であり、衰退したインナーシティにおいて地代が低下しており、そこを開発することによって利潤を得ようとする資本の回帰が現象を起こすとされた(藤塚 2013)。それ以降、この二つの議論はどちらも優位に立たなかったが、
    ジェントリフィケーション
    は資本主義の不均等発展・ポスト産業時代・都市文化論という経済・社会・文化現象と関連づけられてきた。1990年代以降、
    ジェントリフィケーション
    の「派生」という現象が「古典的
    ジェントリフィケーション
    」の元来の定義に異議を申し立てた。例えば、更新・修復だけではなく新築の
    ジェントリフィケーション
    、都市部だけでの発生ではなく農村の
    ジェントリフィケーション
    、同一空間で複数回生じるスーパー・
    ジェントリフィケーション
    などの用語が派生し、
    ジェントリフィケーション
    について多様な理解が展開されている。多くの内容が付加され、定義が曖昧になる可能性があることについて、研究者たちは、この用語の広義の定義を採用し、柔軟に利用する態度を保持すべきであると主張する。そのため、
    ジェントリフィケーション
    の中核的要素は、資本の再投資、地域への高所得者の流入、低所得者の直接的・間接的な立ち退き、および景観の大きな変化などとまとめることができる。  
    欧米の
    ジェントリフィケーション
    は1980年代後期から1990年代中期まで一時的に停滞したため、一部の研究者は
    ジェントリフィケーション
    が消滅したと考えた。しかし、1990年代中期から、
    ジェントリフィケーション
    はグローバル化と新自由主義の影響を受け、より強い勢いで全世界に波及してきた。広義の定義を踏まえて、権威主義的な中央集権的統治と絡み合いながら新自由主義的諸要素が組み込まれていく独特の市場経済(Harvey 2005)を導入する中国の都市部における研究の可能性は大きい。圧倒的な政府権力と市場の力が絡み合い、
    ジェントリフィケーション
    は容易に進展する。ここで、Beauregard(1986)による
    ジェントリフィケーション
    の発生の必要条件を踏まえて、中国の都市部における現状を分析する。まずは潜在的なジェントリファイヤーの存在について、沿海部の上海市および内陸部の成都市を例として、産業構造の転換、管理・専門・行政職の人口の都市部での増加を報告する。次に、
    ジェントリフィケーション
    が生じうる住宅について、①外来労働者移民が構成するスラム居住地;②老朽化した旧単位制度の公的コミュニティ;③歴史的美しさを持つ旧住宅の三つに整理する。最後に、立ち退きの可能性がある者について、この三種類の住宅に住んでいた外来労働移民・経営難の国有工場における労働者・都市低所得地元住民の存在を提示する。これらの条件により、改革開放政策に従う土地制度改革・住宅制度改革・分権化という中央政府の政策、および地方政府が経済発展のため制定する政策が相互作用し、市場の力が自由に発揮されるため「障害物」が削除される。
    ジェントリフィケーション
    は、資本蓄積と経済成長が可能な再開発として中国の都市部で急速かつ大規模に生じるといえる。
  • *松尾 卓磨
    日本地理学会発表要旨集
    2020年 2020s 巻 403
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    1.はじめに

     

    ジェントリフィケーション
    と立ち退きの関係性に焦点を置き様々な角度から
    ジェントリフィケーション
    研究をレビューしている5つの論考が2018年から2019年にかけて相次いで発表された(Zhang and He, 2018; Zuk et al., 2018; Cocola-Gant, 2019; Easton et al., 2019; Elliott-Cooper et al., 2019)。いずれの論考も
    ジェントリフィケーション
    の研究史の中では比較的新しく2018年と2019年という短期間に集中的に発表されたものであり、いずれの論考の表題にも
    ジェントリフィケーション
    と立ち退きの両方が含まれ、さらに
    ジェントリフィケーション
    による立ち退きの類型化を行ったピーター・マルクーゼの研究(1985; 1986)への言及が見受けられる。本発表ではこれらの共通点に着目し、
    ジェントリフィケーション
    研究において立ち退き概念やマルクーゼによる立ち退きの類型化がいかに位置づけられ、どのように新たなアプローチが模索されているのかという点について検討する。研究方法としては基本的にはマルクーゼの研究内容や上記の5つの論考の内容を参照し、それらの研究において提示されている
    ジェントリフィケーション研究における立ち退き概念や今後のジェントリフ
    ィケーション
    研究に必要な視点や研究方法を整理する。

    2.結果

     マルクーゼはニューヨークを事例として不動産物件の放棄、

    ジェントリフィケーション
    、立ち退きの関係性について論じる中で、
    ジェントリフィケーション
    によって引き起こされる4種類の立ち退き、すなわち最後の居住者に対する立ち退き、連鎖的に進行する立ち退き、排他的な立ち退き、立ち退きの圧力の4つを提示した。最初の2つの立ち退きは直接的な立ち退きであり、漸進的な過程の最後の段階に着目するのか、より長い時間軸で捉えるのかという着眼点の違いに基づいて2つに分類されている。そして後者の2つは間接的な立ち退きにあたり、これらは立ち退きの内容の違いにより重点が置かれて分類されている。
    ジェントリフィケーション
    研究が進展する中では特に間接的な立ち退きへのアプローチが新築の
    ジェントリフィケーション
    、小売業の
    ジェントリフィケーション
    、教育での立ち退きなどの把握の際に応用されている。しかしながら、このマルクーゼによる類型化は依然として高く評価されてはいるものの、この類型化が1980年代のニューヨークの状況に基づいて提示されたものであるという点には留意しなければならない。この点に関してElliott-Cooper et al.(2019)は
    ジェントリフィケーション研究のレビューを通じてジェントリフィケーション
    と立ち退きに対する多角的なアプローチの必要性を指摘している。彼らは「立ち退きの現象学的側面や情動的側面、立ち退きという経験に内在する怒りや絶望」を理解する必要があると主張し、さらにAtkinson(2015)を参照しながら
    ジェントリフィケーション
    による立ち退きを「居住者とコミュニティの繋がりを断ち切る『アンホーミング』の過程」として捉える視点を提示している。こうした視点は、
    ジェントリフィケーション
    に直面し立ち退かされる人びとのアイデンティティや心理へのアプローチを促すものであり、
    ジェントリフィケーション
    および立ち退きへの抵抗に関するアプローチとも密接に関連している。そしてElliott-Cooper et al.(2019)を含む近年発表された5つの論考においては、多種多様な視点や方法論に言及されながら検討されるべき重要な論点が数多く提示されており、例えば「サンドイッチクラス」や元ジェントリファイアー、公共投資によって進められる政府主導の
    ジェントリフィケーション
    、そしてビッグデータを使用した立ち退きの定量的研究などにも言及されている。

    3.結論

     先行研究の整理を通じて、近年の研究においてもマルクーゼによる立ち退きの類型化の重要性が認められており、

    ジェントリフィケーション
    研究の文脈においては依然として頻繁に参照されているということが明らかとなった。そして本研究で参照した5つの論考がその点を裏付ける重要なレビュー研究の事例であるということも確認することができた。
    ジェントリフィケーションの定義やジェントリフィケーション
    へのアプローチの多様化は同時に立ち退きの定義やアプローチの多様化も意味している。そのため今後の研究では
    ジェントリフィケーション
    の研究史における概念やアプローチの展開、そしてそれらの重要性を十分に踏まえながら、そうした先行研究で提示されている視点、概念、事例研究が応用されていくことが期待される。

    [謝辞] 本研究には日本学術振興会科学研究費補助金(特別研究員奨励費:課題番号18J23295)を使用した。

  • *藤塚 吉浩
    人文地理学会大会 研究発表要旨
    2007年 2007 巻 403
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/12
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     1990年代初頭には景気後退もあり、
    ジェントリフィケーション
    は終わるとした論者(Bourne, 1993)もあったが、1990年代においても世界各地で
    ジェントリフィケーション
    がみられる(Atkinson and Bridge, 2005)。ニューヨーク市では、1990年代も
    ジェントリフィケーション
    はみられる(藤塚,2007)が、1980年代に比べて性質は変化した。
     まず、エスニシティの変化があげられる。マンハッタン(Manhattan)北部のハーレム(Harlem)は黒人の多い住宅地であるが、
    ジェントリフィケーション
    の進行とともに、都市更新事業が行われ、白人の来住もみられるようになった。
     次に、
    ジェントリフィケーション
    を惹起させる公共事業の存在である。ロウアーイーストサイド(Lower East Side)では、少数民族の居住者が多いが,1980年代から
    ジェントリフィケーション
    が進行した。地区内の中心にあるトンプキンスクエア(Tompkin Square)公園では,ここで寝泊まりするホームレスの人たちも多かったが,彼らの居場所は強制的に撤去された。公園の周囲にはフェンスが設けられ,中では親子の憩う姿がみられるようになった(Smith, 1996)。高学歴者の増加にみられるように、
    ジェントリフィケーション
    が進行している。公共が関わって、より大規模に
    ジェントリフィケーション
    が起こっており、反対されることは少なくなってきている(Hackworth, 2002)。
     さらに、
    ジェントリフィケーション
    の発現する場所も変化した。早くに
    ジェントリフィケーション
    の発現した地区はマンハッタンに多かったが、イーストリバー(East River)の対岸のブルックリン(Brooklyn)においても、
    ジェントリフィケーション
    がみられるようになった。ソーホー(SoHo)やロウアーイーストサイドに多い芸術家のなかには、賃料の上昇により当地を離れた者もある。ブルックリンのウィリアムズバーグ(Williamsburg)では、工場跡がアトリエなどに再利用され、多くの芸術家が居住するようになった。
     そして、世界都市化に関連した企業エリートの増加によるものである。ブルックリンハイツ(Brooklyn Heights)では,かつて
    ジェントリフィケーション
    により再生された近隣に,より裕福なジェントリファイアーが来住しており,Lees(2003)はこれをスーパー
    ジェントリフィケーション
    として示した。世界的な金融市場や多国籍企業に勤める裕福な居住者が集中した結果,平均所得が高くなったのである。ブルックリンハイツは歴史的建築物の保存地区であるが,その周辺で不動産業者と開発業者は,贅沢な高層住宅の建設を進める一方で,歴史的な特性と近隣の低層の雰囲気が弱まることへの関心をそらすのに熱心であった。スーパージェントリファイアーは、歴史的価値の共有には無関心で、近隣関係にも参加せず、コミュニティが希薄になった。
  • *藤塚 吉浩
    日本地理学会発表要旨集
    2021年 2021s 巻 S304
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/29
    会議録・要旨集 フリー

    ジェントリフィケーション
    は,ロンドンをはじめ,ニューヨーク市やベルリン,東京,大阪,京都など,世界的に起こる現象である.
    ジェントリフィケーション
    の理解には,どんなところで起こるかについての学習が必要である.ニューヨーク市の地誌学習では,都市の内部構造について知ることが重要である.高校の地理の教科書では,ニューヨーク市のCBD周辺には,かつて工場が立地し,その外側に労働者の住宅地が存在し,家賃の低い住宅地に移民の街が形成されたと紹介される.

     本報告では,ヒスパニック以外の白人人口の増加を指標として

    ジェントリフィケーション
    を分析する.移民の街に関して,中国人の集住地であるチャイナタウンにおいては,2000年代にアジア系人口が減少した.アフリカ系の人々の居住地として示されるハーレムにおいても,アフリカ系人口が減少し,白人人口が増加した.
    ジェントリフィケーション
    は1970年代にソーホーで起こったが,2000年代には白人人口は減少した.マンハッタンでは地価が高騰し,その多くがブルックリンへ移ったのである.このように
    ジェントリフィケーション
    は,既知のセグリゲーションの図を変えてきた.

     ブルックリン北部のウィリアムズバーグにはユダヤ人街とプエルトリコ人街,グリーンポイントにはポーランド人街などがある.2000年代には,ウイリアムズバーグにおいて白人人口が増加し,ヒスパニック人口が大きく減少した.白人がアフリカ系住民を立ち退きさせるという構図では,

    ジェントリフィケーション
    の本質を見誤るおそれがある.現象を理解するためには,発現要因について考えなければならない.

     2000年代には,

    ジェントリフィケーション
    の発現要因についても変化があった.イースト川沿いに多く立地していた工場や倉庫が使われなくなり,2005年にゾーニングが変更されるとともに,規制緩和によりウォーターフロントには高層共同住宅が建設された.規制緩和は内陸部にも及び,これが
    ジェントリフィケーション
    の発現要因となった.本報告では,地誌学習の素材として,ブルックリン北部における
    ジェントリフィケーション
    を詳細に検討する.

  • ――英米発ジェントリフィケーション論を逆照射する研究にむけて――
    森 千香子
    社会学評論
    2020年 71 巻 2 号 331-342
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
  • *飯塚 遼
    日本地理学会発表要旨集
    2013年 2013s 巻 512
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    イングランドの一部の農村地域において、サービス・クラスと呼ばれるホワイトカラー層の流入が顕著となっている地域がみられる。そのような社会階級構成の変化をともなう人口変動は、農村地域の社会的、経済的、あるいは文化的側面の変容を生じさせており、その現象はルーラル・
    ジェントリフィケーション
    として捉えられている。農村地理学や農村社会学の分野において、ルーラル・
    ジェントリフィケーション
    は、農村再編の概念の1つとして注目されており、世界の各地域における研究の蓄積が期待されている。本研究は、近年、ルーラル・
    ジェントリフィケーション
    が進展しているイングランド・ダービーシャー・デールスを対象として、ルーラル・
    ジェントリフィケーション
    のプロセスとその要因について議論することを目的とする。
  • 伊藤 千尋
    アフリカ研究
    2017年 2017 巻 92 号 163-166
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー
  • *藤塚 吉浩
    人文地理学会大会 研究発表要旨
    2011年 2011 巻 102
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/23
    会議録・要旨集 フリー
     
    ジェントリフィケーション
    は、1980年代に比べると現象が大きく変質してきた。
    ジェントリフィケーション
    は、もはや住宅市場の狭い非現実的な特異さに関するものではなく、よりもっと大きなものを得ようとする居住の最先端、すなわち、中心部の都市景観に関する階級の再建となっている。
     現象の変化として近年注目されている研究テーマは、新築の
    ジェントリフィケーション
    (new-build gentrification)である。新築の
    ジェントリフィケーション
    は、工場跡地や放棄された土地、建物が取り壊されたところに新たに建設されたものである。新築の
    ジェントリフィケーション
    とは、再投資と高所得者による地域の社会的上向化、景観の変化、低所得の周辺住民の直接的・間接的な立ち退きを伴うものである。本報告では、このような現象が東京特別区部において発現しているのか考察する。
     21世紀に入り
    ジェントリフィケーション
    の多発する要因のひとつに、政府の積極的な支援がある。ニューヨーク市の事例では、工業地域から住宅建設を可能にする用途地域への変更により、大規模なコンドミニアムの建設が可能となった。本報告ではまた、住宅に関する施策の変化が、
    ジェントリフィケーション
    の発現に影響するのか検討する。
     1990年代の
    ジェントリフィケーション
    の発現は、京都市の事例では都心周辺地区にみられた。ニューヨーク市の事例では、イーストリバーを挟んだ都心の対岸地区で
    ジェントリフィケーション
    がみられた。本報告では、2000年代の発現地区と都心との位置関係について検討する。
     
    ジェントリフィケーション
    の発現を示す指標として、2000年代前半の専門的技術的・管理的職業従事者の動向について検討した。中央区の増加率は30%を超えて最も高く、江東区と千代田区の増加率は10%を超えた。地区で起こる
    ジェントリフィケーション
    の特性を考えると、区の範囲で
    ジェントリフィケーション
    が起こっているか判断することは困難なので、本報告では専門的技術的・管理的職業従事者が最も増加した中央区を事例として詳細に検討する。
     中央区の住宅関連施策の実施に関しては、1980年代の投機的土地売買による居住人口の減少が背景にある。中央区は居住人口を確保するために、1985年に中央区市街地開発指導要綱を制定し、大規模な開発には住宅附置を義務づけた。住宅の確保に効果はあったが、新築された共同住宅の家賃が高く、従前の借家人は入居できず立ち退きとなる問題があった。住宅附置義務により増加した共同住宅の多くは、単身者用であった。住宅附置義務制度は、規制緩和された建物の高さに関する建築紛争の多発により2003年に廃止されたが、
    ジェントリフィケーション
    の発現に影響を及ぼしたのである。
     
    ジェントリフィケーション
    の発現地区については、町丁別に専門的技術的・管理的職業従事者の変化を検討する。首都高速道路の都心環状線と上野線の西側が都心の業務地区であるが、専門的技術的・管理的職業従事者は、都心周辺地区で増加するとともに、隅田川の東岸の地区においても増加した。日本橋の問屋街や築地市場では卸売業が集積し、入船から湊にかけての地区では印刷工場や倉庫などがみられる。都心の業務機能はこれらの地域には拡大せず、再投資による共同住宅の建設があり、社会的上向化が起こった。新築の
    ジェントリフィケーション
    に関連する景観の変化と立ち退きについては、地区ごとに詳しく検討する。
     東日本橋から人形町にかけての地区では、繊維・衣服等卸売業が集積しており、近年ではそれらの店舗の跡地に共同住宅が多数建設されている。1階に店舗を設置しない共同住宅の建設計画には、問屋街の連続性が失われるとした建築紛争があった。
     入船から湊にかけての地区では、1980年代の地価高騰期の投機的土地売買のために、住民は立ち退きとなり、住宅や工場、倉庫の建物は取り壊された。1990年代には、景気後退の影響からそれらの跡地は利用されず放置された。2002年には都市再生特別措置法が施行され、都市再生特別地区として超高層共同住宅の建設計画がある。
     隅田川より東の佃や月島、勝どきでは、大規模な高層共同住宅開発が進められた。佃では、造船所と倉庫などの跡地に、1980年代半ばより超高層共同住宅が建設され、景観は大きく変化した。佃や月島は、路地空間に特徴のある下町である。近隣への中高層共同住宅の建設に際しては、既存の高層住宅の住民から反対されるなど、新たな建築紛争が起こっている。
  • 石川県・金沢市での再投資と「目的地化」の地区分析から
    内田 奈芳美
    都市計画論文集
    2015年 50 巻 3 号 451-457
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、
    ジェントリフィケーション
    のこれまでの論説に基づき、方法としての再投資と、結果としての地区への目的地文化の付加(「目的地化」)の両側面から地域変化を読み取ることで、日本型の
    ジェントリフィケーション
    の実態を明らかにすることを目的とする。対象は石川県金沢市であり、ケーススタディ地区として二地区を選定した。研究方法として、まず仮説としての定義を示した後、評価軸として「再投資」と「目的地化」を挙げ、評価軸に従ってケーススタディ地区の分析を行い、仮説としての定義を検証した。ケーススタディ地区の分析から、日本型の地方都市における
    ジェントリフィケーション
    として、「既存の建物に再投資が起こり、地価のレベルと連動した動きを持つ再投資の規模の大小が『目的地化』の質を規定すること」であると最終的に定義した。
  • ドイツのハンブルク市における建設法典第172条の運用実態に注目して
    太田 尚孝
    都市計画論文集
    2017年 52 巻 3 号 937-944
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、21世紀のわが国の大都市に共通しうる都市計画課題としてインナーシティにおける
    ジェントリフィケーション
    への対応の可能性と課題を理解することを目的とする。ドイツのハンブルク市における建設法典第172条の運用実態に関する調査から、以下の点が明らかになった。1)
    ジェントリフィケーション
    が生じる地区での都市開発に合わせて制度設計をすることで地区レベルでの否定的影響を回避できる可能性がある。2)一方で、都市計画制度のみでは
    ジェントリフィケーション
    への対応は不十分であり、住宅政策等の連携が必要不可欠である。3)
    ジェントリフィケーション
    への対策には予防的措置が効果的であり、そのためには行政組織の戦略的発想と分野横断型の体制構築が必要である。
  • *藤塚 吉浩
    日本地理学会発表要旨集
    2018年 2018a 巻 S504
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    日本では、2002年に都市再生特別措置法が公布され、大都市中心部は都市再生緊急整備地域に指定された。2002年には、建築基準法が改正されて、斜線制限の適用除外制度として天空率の指標が導入された。これにより、低層の木造家屋の多い地域に、超高層の共同住宅が多数建設され、景観は大きく変容した(藤塚 2017a)。

     本研究では、東京を事例に、2000年以降の
    ジェントリフィケーション
    の変化について検討する。2000年代の東京では、都心に近接したところで
    ジェントリフィケーション
    は発現した(藤塚 2014)。1980年代の地価高騰期の投機的な不動産売買により立ち退きが起こり、1990年代半ば以降は低未利用地となっていたことが、その発現要因であった。中央区では、人口減少対策としての住宅附置からはじまった施策の変遷(川崎 2009)とともに、規制緩和により多数の超高層住宅を生み出した(上野 2017)。港区では、新たな地下鉄駅周辺への新築の
    ジェントリフィケーション
    の発現(Lutzeler 2008)とともに、中小工場の集積地域においてグローバリゼーションが進行し、
    ジェントリフィケーション
    の発現に影響した(藤塚 2017b)。

     
    ジェントリフィケーション
    の指標として、専門・技術,管理職就業者数の変化を使用する(図1)。2010年から2015年の90人以上の増加を町丁別にみると、2000年代に増加が顕著であった、中央区や港区にはいくつかみられるが、都心周辺の文京区や豊島区、品川区や目黒区に多く、発現地域は変化した。このように都心から離れた地区において専門・技術,管理職就業者の増加は顕著であるが、その要因を検討するとともに、影響についても考察する。
  • 米国・シアトル市の2地区を事例として
    内田 奈芳美
    都市計画論文集
    2022年 57 巻 3 号 918-925
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は「

    ジェントリフィケーション
    はパンデミックによって加速したのではないか」との仮説をアメリカ合衆国シアトル市を事例として検証するものである。シアトル市の中で新築型
    ジェントリフィケーション
    として1.サウス・レイク・ユニオン、商業型
    ジェントリフィケーション
    として2.キャピトルヒルを研究対象地域として選んだ。地元紙における報道を時系列で整理し、開発状況とその担い手、パンデミック期間中の商業の変化、かつ不動産評価の変動を分析することで「投資の流入」としての
    ジェントリフィケーション
    へのパンデミックの影響を明らかにし、仮説を検証した。 パンデミック中、不動産評価は低下したが、商業型では店舗閉鎖と新規の流入が促進され、新築型の地域では投資の流入が継続していたことが分かった。

  • 兵庫県篠山市の経験
    *川口 夏希
    日本地理学会発表要旨集
    2018年 2018a 巻 S505
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.
    ジェントリフィケーション
    と「ルーラル」
    ジェントリフィケーション

     
    ジェントリフィケーション
    は従来,大都市内部のインナーシティで生起する,極めて都市的な現象として理解されてきたと言えよう.産業構造の転換の中で衰退したかつての工業地域が再価値付与され,地区の景観および居住者の社会階層の変化,低所得者層やマイノリティといった旧住民の立退きが引き起こされるという現象である.
     
    ジェントリフィケーション
    をめぐっては,ニール・スミスの議論に代表される,地代格差によって利潤を得ようとする資本の動きや,ポストフォーディズム期の社会集団と嗜好性の変化といった,様々な論点から議論が蓄積されてきたが,そこに共通しているのは,インナーシティという大都市内部の衰退した(価値が損なわれた)空間に対する価値の再付与をめぐった諸力のせめぎ合いであるという点であろう.
     しかしながら近年,インナーシティだけではなく,都市とは大きく背景の異なる「ルーラル」エリアにおいても
    ジェントリフィケーション
    が生起することが提起されている.このルーラル・
    ジェントリフィケーション
    と呼ばれる現象を,どのように理解すればよいのであろうか.ルーラルな空間への価値の再付与はどのようにして起こっているのであろうか.どのような社会経済的背景において,誰によって,何が価値付けられるのであろうか.そして,その過程において,どのように
    ジェントリフィケーション
    へと帰結していくのか,明らかにする必要がある.

    2.「豊穣化」による可能性と
    ジェントリフィケーション

     「価値の再付与」をめぐっては,市場経済自体の変化に目を向けることが重要である.現在,とりわけ先進諸国では,企業は過去の物語を内包する,「すでにあるもの」の価値の再付与によって利潤を得る傾向にある.フランスの社会学者であるボルタンスキーとエスケールによって「豊穣化の経済」として近年論じられるものである.その議論の中で強調されるのは,豊穣化の経済において,歴史的な地区,アート・文化によって意味づけをされた場所が豊穣化されるという点である.加えて,その豊穣化のプロセスは,衰退した地域(たとえば,脱工業化によって衰退した工業地域)に「再生」の可能性を与える一方で,
    ジェントリフィケーション
    のリスクをも併せ持つことが指摘されている.地域のコモンズの生産なのか,あるいは,ジェントリフィケーシォンの生起なのか,価値の再付与が有する両義性の指摘であるとも換言できよう.

    3.兵庫県篠山市の経験
     以上のような問題意識を踏まえて,本報告では,兵庫県篠山市で行われている地域再生に向けた取り組みを事例として取り上げる.篠山市は,大阪市,神戸市,京都市から約50kmに位置する人口4万人強の小都市である.近年,日本においても,歴史的な街区や建造物のリノベーションが注目を集め,農村部への若年層の移住が増加する中,篠山市もまた,若年層の移住と古民家のリノベーションやコンバージョンが顕著な地域である.
     他方で,人口減少,高齢化,空き家問題,限界集落といった日本の地方都市に共通する深刻な問題を抱えながら,地域に残る歴史的景観や古民家,里山での生活の価値を見直し,地域再生へとつなげようとする政策や取り組みが実践されている.
     篠山市の事例を通じて,価値の再付与(豊穣化)がルーラルな地域に再生をもたらすのか,それともジェントリフケーションへと帰結してしまうのか,検討したい.
  • 小島 千佳
    人文地理
    2023年 75 巻 2 号 119-141
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/22
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,文学作品の分析を通じて,

    ジェントリフィケーション
    における立ち退きをめぐる問題について,定性的な考察を試みるものである。英語圏の
    ジェントリフィケーション
    研究では,聞き取り調査に依拠する定性的研究により,居住者の場所喪失という犠牲の経験が論じられつつある。本稿では,文学作品の表象分析を通じて,立ち退きに伴う登場人物の場所喪失を関係論的な場所論の視座から検討した。具体的には
    ジェントリフィケーション
    を描いた,ヤン・ブラントによる小説『街の中のとある住まい』を研究対象とし,主人公をはじめとした登場人物の場所喪失の描かれ方を分析した。その結果,主人公の場所喪失は一時的なものではなく,長期にわたる精神的苦痛を伴う過程として描かれていたことが明らかとなった。他方で,旧東ベルリン居住者やトルコ系住民の場所喪失との関係において,主人公は他者の場所喪失による痛みに無自覚であるばかりか,それをロマンチックな経験へと読み替える加害者としても描かれていた。本小説は,
    ジェントリフィケーション
    により住まいが奪われる痛みを私小説形式で伝えるとともに,個人の経験に含まれる犠牲と加害との両義性を示している。しかし,本小説における主人公と他者の痛みの描写のように,場所喪失の経験を序列化する物語は,現実に起きている
    ジェントリフィケーション
    に対する想像力を方向付け,立ち退かされる人々のあいだに分断をもたらし得るという問題を内包している。

  • *藤塚 吉浩
    人文地理学会大会 研究発表要旨
    2013年 2013 巻
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/24
    会議録・要旨集 フリー
    港湾産業が衰退したイースト川沿いでは、ゾーニングの変更により
    ジェントリフィケーション
    が起こり、白人が増加した。
  • 香川 貴志
    人文地理
    2017年 69 巻 2 号 262-263
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/07
    ジャーナル フリー
  • *藤塚 吉浩
    日本地理学会発表要旨集
    2023年 2023a 巻 S102
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/28
    会議録・要旨集 フリー

    高等学校の地理の教科書には,

    ジェントリフィケーション
    およびインナーシティ問題が取り上げられている.ロンドン東部,特にドックランズの再開発の事例をもとに,インナーシティの変化について取り上げる教科書が多い.本報告では,次の2つの観点から検討する.第1に,地誌学習の基本は地理の教科書を読むことなので,高等学校の地理探究の教科書3冊と地理総合の教科書7冊と,OxfordのIB Diploma Programme, Geography 2nd editionを対象として,
    ジェントリフィケーション
    およびインナーシティ問題についての記述と,ロンドンに関する記述を分析する.第2に,これらの教科書の記述に関して,ロンドン東部における
    ジェントリフィケーション
    およびインナーシティ問題はどのような状況なのか,景観の変化と統計の分析により検証する.

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