本稿は,日本における西洋音楽市場の動向についての実証研究を通じて,製品の正当性(legitimacy)のダイナミックな変容について考察する。この市場では,多様なプレーヤーが個別に正当性を探求しており,それらが全体として製品の価値規範を変えていく現象がみられる。演奏家の個人・組織が,市場の随所で局所的に問題解決を図りながら,市場環境の変化に適応している様子に着目しつつ,業界全体の価値規範が改訂的に見直されていく過程の分析を試みる。最後に本研究の限界について,またそれを克服するために本研究の分析と組み合わせて行うべき分析作業について議論がなされる。
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