本研究では,オート
ステレオグラム
から視差を持った領域を抽出することのできる両眼立体視の神経系モデルの構築を目的として,Hayashiらが提案する両眼立体視モデル(Hayashi et al.,2004)に対して,輻輳・開散眼球運動を想定した融合点推定過程を導入し,その動作検証を行った.オート
ステレオグラム
とは,通常の
ステレオグラム
とは異なって,単一の画像の中に巧妙に視差を仕込むことで,奥行きの知覚がもたらされる画像であり,周期的な画像の配置が視差検出の手がかりとなる.提案モデルは,輻輳・開散眼球運動によって左右の網膜に投影される視覚パターンを左右に移動させ,このときのbinocular energyが最大となる位置に輻輳角を固定して,position shift計算を行うものである.シミュレーションの結果,単一のオート
ステレオグラム
を左右眼の入力として用いた場合でも,特定の視差を持った領域の抽出が可能であることが示され,奥行き知覚において,視差検出機構と眼球運動系の協調動作の重要性が示唆された.
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