【目的】人間の重心線は矢状面上にて各関節中心に位置し,直立位における関節負荷を少なくしている.また,高重心化から筋発揮率向上,歩行効率の改善にてエネルギー消費を抑えた長距離移動を可能としている.本稿では
ストリームライン
による機能改善を図った両人工股関節全置換術(以下THA)患者へのアプローチを報告する.
【対象】対象A 氏,50 歳代女性.社員寮寮母をしており,数年前より右股関節出現.右THA 後も疲労感からフルタイム勤務困難.約2 ヶ月後左THA 施行となる.本症例はヘルシンキ宣言に則り,患者様に対して説明・同意を得た.
【評価】術前・術後(2 週・4 週)に定期評価(NRS,ROM,MMT,10mgait,Hip JOA)を実施し,10mgait・Hip JOA 歩行項目を比較し,歩行効率の指標とした.
【結果】 股関節伸展0°→10°足関節背屈0°→10°,MMT 股関節屈曲4→5,股関節外転4→5 の向上が見られた.Hip JOA 歩行項目では15 点→18 点と変化し,術前歩行動作でのAnkle Rocker の改善,重心の上方/前方移動改善,矢状面アライメントでの重心線の接近.また,10mgait9.4sec→7.9sec,歩0.65m→0.71m と増加が見られた.
【治療】
ストリームライン
構築を実施.
ストリームラインは水泳
における姿勢であり,本症例においてはハーフストレッチポール上で,股関節-膝関節-足関節を直線上に配置した姿勢を保持し,重心線・各関節中心の位置関係適正化,インナーユニット収縮促通を図り.同時に腸腰筋ストレッチによる股関節伸展可動域向上・収縮力向上を図り実施した. 【考察】Hip JOA の改善要因として,歩行効率向上による歩行時エネルギー消費量軽減によるものと考え,歩行効率向上には歩行時Ankle Rocker の改善,股関節伸展可動域向上による歩幅の改善にあるものと考えた.これらの変化は
ストリームライン
構築実施に伴う重心線と矢状面上での各関節位置の適正化,インナーユニットの促通,及び筋活動量軽減によるエネルギー消費量減少から,フルタイムでの勤務が可能となった.
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