濃尾平野の地下1,5OOm以上の深さに及ぶ堆積層の下部に約50℃の高温の超深層地下水が存在する.その水質の経年変動をみる目的で9ケ所の井戸を選んで,1973年3月から1977年11月までの5年間に亘って,年1回ずつ水質を調査した.
NaHCO
3型の水が4例,NaCl型の水が4例であり,各井戸について5年間に亘る水質主要成分の変動(σ/X)は10%以下であり,水質的には非常に安定した地下水であることが知られた.
しかし,1例のみは大きな変動を示すことが認められた.この例において,Cl
-は101mg/lから488mg/lまで約5倍の濃さになるとともに,その組成がNaHCO
3型からNaCl型に変化した.
NaHCO
3型の水が属する帯水層のCl
-は122mg/lであり,上層部に位置し,Nacl型のそれは341mg/lであり,下層部に位置することが推定された.
1例において大きな水質変動が認められたのは,この場合,
ストレーナー
の延長が約250mに亘っているため,上下2層の帯水層にまたがって揚水していることによる.揚水圧の変化または,
ストレーナー
の部分的な目づまりのため2層からの揚水量の割合が変ったために,汲み上げられる水の水質に大きな変化が認められたものと思われる.
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