目的:喉頭のmicrosurgeryは拡大視下に確実な手術ができるため,ひろく一般に行なわれるようになつた.喉頭のmicrosurgeryの大きな目的の一つに術後の発声機能をできるだけ正常にすることがある.従来の喉頭のmicrosurgeryの方法では術中に喉頭の発声機能を知ることとは難かしかつた.この点を解決するため
ストロボスコープ
を使用して,手術の経過と共に発声時の声帯振動の状態を観察し,声帯振動ができるだけ正常に近い状態で手術を終了すれば術後の音声も最良の結果をうると考えて,その方法を試みた.
方法:従来の喉頭のmicrosurgeryの光源として
ストロボスコープ
の光源を使用する方法をとつた.すなわち,
ストロボスコープ
の発光管のより明るいものを試作し,その両端よりグラスフアイバーを導光用として喉頭鏡の両側先端まで導き,手術用顕微鏡を介して喉頭鏡下に発声時の声帯の振動を観察しうると共に,同じ光源でスイツチの操作一つで最高発光がでるようにして,手術も行ないうるように
ストロボスコープ
を改造した.手術の実際は,1. 麻酔は発声が必要であるため,Neuroleptanalgesiaに咽喉頭局所噴霧麻酔,もしくは局所塗布注入麻酔のみで行ない,2. 喉頭を展開し,3. 手術用顕微鏡下に局所所見を観察し,4. 術前の声帯振動を観察し,5. 手術を施行し,6. 声帯振動観察の順に行なう.必要に応じて5.6. を繰返し声振帯動が正常に最も近いと考えられる状態で手術を終了する.
結果:昭和47年1月より12月の1年間に喉頭の器質的疾患152例に本法を施行した.多くの疾患において手術の進行と共に声帯振動は改善され正常に近い振動が観察されるものが多かつた.
その経験から:
1. 術前の声帯振動の状態で手術方法を選択しうる.
2. 声帯振動の観察から手術の終了時を決定しうる.
3. 声帯振動が最もよい状態で手術を終了するため,術後の音声改善が確実である.以上のような利点があり,声帯の器質的疾患の手術法として非常に有効な方法と考えられる。その方法及び代表症例について述べた.
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