咀嚼能力の評価のために, 咀嚼状態を知る簡便な方法を開発した.可塑性要素のあるプラスチック容器 (ポリエチレン
スポイト
) を咀嚼対象物として, 咀嚼による形状変化を厚さ層の内外を挟む液体電極間の容量変化として捉え測定した.咀嚼により加圧された部分には複数の不定形の微小な凹部が発生するが, この部分の厚さの減少と表面積増の変化が電極間の容量変化として記録される.
容量計測は, 倒立させた
スポイト
を容器の中で内外に所定位置まで水で満たし, 金属導線をそれぞれ水面下まで導入し電極とする.導線はそれぞれの水中に通じて, 水の隅々まで電極機能が延長され
スポイト
の厚さ層を内外から挟むコンデンサーとなる.同容量はLCRメータで計測した.咀嚼による変形は, 厚さ層の等価的な厚さ減と面積増として現れるので, 容量はいずれの変化要素でも増加することになる.同容量の咀嚼回数, 咀嚼の強さに対する単調増加の傾向を確かめた後, 歯科的に健康な被験者について, 咬筋の筋電位計測および咬筋力計により, 咬む強さと容量増加の関係を求めた.この関係の勾配は咀嚼効率を表すと考えられるが, 健常者間においても2~3倍の違いが観察された.また, 歯科医に通院する患者に本法を用いたところ, 義歯の数が多くなると咀嚼力が減少する傾向, 年齢とともに咀嚼力が減少する傾向等が観察された.
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