熱分解コーキング, ニッケル鉱石ならびに酸化鉄を用いた接触分解, および水素化脱硫脱メタルを活用して, 残油のアップグレーディングに関する研究を実施した。
減圧下ならびにガス流通常圧下において残油の熱分解コーキングを実施したところ, 得られたコークは製鉄用人造粘結炭としての良好な性質を有することが明らかになった。
また, ニッケル鉱石を触媒として用いて残油の分解を行った。その結果, ニッケル鉱石は分解活性ならびにコーキング活性を有することが見い出された。さらに, 残油の分解時に鉱石中の酸化ニッケルが部分還元されて, ニッケルが炭酸アンモニア水溶液で容易に抽出された。このことは, 石油精製と金属製錬の結合の可能性を示唆するものである。
この結果をさらに発展させて, 酸化鉄を触媒とする残油の分解を行った。その結果, 生成コークとスチームの反応により水素を同時発生させるとともに, コークが副生しないプロセスが可能であることを提示した。
また, 残油脱硫反応の動力学的検討を行い, 反応温度の変化とともに反応速度次数が変化することを見い出した。
さらに, 残油の脱メタル触媒の開発を行い, その研究成果について紹介した。
抄録全体を表示