われわれは, レンコン生産農業者の労働負担と健康管理に関する研究として, 平成4年度はJA土浦組合員の集団健診成績を作目別に比較検討した。また, レンコン生産の特異性に着目し, その農事暦と収穫期のタイムスタディを調査した。その結果, レンコン生産者288人, 非生産者546人の健診成績では有病者は非生産者にむしろ高率であった。収穫期のタイムスタディをみると, 掘りとり作業は8時間と長く, 疲労感, 肩こり, 腰痛を訴える者が多く, 女子では血尿が多くみられた。省力化したい作業として19%の者が掘りとり作業をあげており, 改善が望まれる。
平成5年度はレンコン生産者に対し, 生産行動調査を実施した。その結果をみると, 男女とも冬期に4時間以上も吹きさらし, 水中で作業する者が80~88%に及び, しかも体が不調であるにも拘らず無理して作業する者が女子71%, 男子56%と多かった。一方, 生活行動調査の結果をみると, 食習慣では塩辛いものが好きな者が半数であり, 冷え, 腰痛, 肩こりなど健康に不安を訴える者がレンコン生産者に多く, これはレンコン生産に伴う苛酷な農作業に起因するものと考えられる。
さらに平成6年度は「農業従事者用蓄積的疲労徴候インデックス」(CFSI-A) 調査をレンコン生産者197人を対象に行い, 労働負担評価についての妥当性を検討した上で健康管理の指標とした。その結果をみると, 男女ともに一般的疲労感が相対的に高い値を示している。身体症状として目の症状, 腰痛, 肩こりなどの訴えが多いことから収穫作業との関連が推測された。レソコン生産者197人を対象とした農作業改善に関するアンケート調査の結果をみると, 収穫時の無理な作業姿勢, 作業場の不良, 過載重量など改善すべきことが多い反面, 収穫作業に便利な器具を使用したり, 作業着についても寒冷対策がとられていることが分かった。
生産者の高齢化, 後継者難, 農業経済などの社会的問題もあるが, 他の地域におけるレンコン栽培の実態ならびに農業者の健康状態を比較検討し, 生産者のくらしと健康を守るために健康管理を推進してゆきたいと考えている。
抄録全体を表示