【目的】
2013年4月から高等学校新学習指導要領が全面実施となり,「家庭基礎」(新課程)の消費生活と環境の中に,フェアトレードに関する学習内容が加わった。しかし,地方都市では日常生活でフェアトレード商品に出会う機会はほとんど無く,1年次「現代社会」でフェアトレードについて学習した2年生においても,学習内容を十分理解できていない。そこで,2013年度「消費者教育推進のための調査研究事業」の実施にあたって,2年生は旧学習指導要領の学年ではあるが,公民科と連携を取りながら,地元のNPO法人と連携して,地方都市では身近に販売されていないフェアトレードの
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に関するワークショップや体験実習を取り入れ,階層構造分析法による
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購入に関する意識調査を行った(2013年7月)。翌2014年9月に同じ生徒を対象として同一の意識調査を実施した。実践前の調査結果と比較検討することによって,フェアトレードの仕組みや味を体験したことによる高校生の
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購入に関する意識の変化や授業実践の効果について明らかにすることを目的とした。
【授業実践】
家庭科の科目を選択している生徒14名(2年生女子)を対象に,松山市に拠点を置くNPO法人「えひめグローバルネットワーク」と連携して,
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を題材とした授業実践を3回実施した。
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のワークショップ(7月9日:本校)>
第1回目の授業は,種類が分からないように中身だけにした6種類の
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(国内メーカー2種類,海外メーカー2種類,フェアトレード
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2種類)の食べ比べをして,各自5点満点(合計得点70点)で採点した。採点の結果は35点~60点であったが,「おいしい」と感じたのは普段食べ慣れている国内メーカー2社のものであり,双方とも合計60点で同点だった。また生徒たちが食べた日本の
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については,どちらの会社の製品か味のみで判断できた。次に得点が高かったのは,海外メーカーから輸入されている2種類の
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で,最も得点が低かったのはフェアトレードの
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2種類であった。
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メーカーに質問しよう(7月16日:本校)>
食べ比べた6種類の
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を「輸入
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」「国内メーカーの
チョコレート
A」「国内メーカーの
チョコレート
B」「フェアトレードの
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」の4つのグループに分け,各グループごとにパッケージを見ながらメーカーに質問したいことを考えさせ,後日,各社のホームページにアクセスして質問への回答を求めた。
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メーカーからの回答(11月19日:本校)>
各社から大変丁寧な回答があった。特に,包装紙にジョイセフやベルマークの表記はあるがフェアトレードではないと思っていた日本の企業も,世界のカカオ産地における経済や環境保全の取り組み等に参画していることが分かり,生徒も教員も新しい知見を得ることができた。生徒たちの感想には「パッケージにも意味があることが分かった」「フェアトレードでない会社もカカオの生産国に支援していることが分かった」「次はフェアトレードの
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を買ってみたい」というものが多かった。
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の購入意識の変化】
階層構造分析法を用いて評定・分析を行った結果,体験実習前後ともに生徒が重視している
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の評価基準は「味,価格,生産地」の順であり,「デザイン」についてはほとんど重視していないことが明らかになった。しかし体験実習を経験した後の評価では「味」「価格」「デザイン」を重視する割合が増え「生産地」を重視する割合が減った。また,総合評価では授業実践後「フェアトレード」より「国産品」の
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の購入のウェイトが高くなったが,「デザイン」のみ「フェアトレード」の割合が高くなった。以上の結果から,
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のワークショップの授業実践を通して,国内メーカーとフェアトレードの
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との関連性に気づき,食べ慣れた国内メーカーの「味」への関心が高まったと考えられる。
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