主婦を対象としたアンケート調査結果を用いて, 野菜消費に対する消費者の意識と行動について分析すると, まず, 消費者の意識について次の二つの点が明らかとなった.すなわち, 第一に, 消費者の野菜に対する食品としての評価一実に多面的な評価一の根底には, 栄養・健康対策因子, 匂い・風味し好因子, 成人病対策因子, 代替食選好因子, 献立デザイン因子と名づけられるような, 消費者の野菜に対するニーズの潜在することが明らかとなった.
第二に, 野菜摂取の利点に関する積極的な評価は, 野菜消費拡大のインセソティブになっていると考えられるが, どのような点での評価がより重要かについては, 回答者の年齢階級間で違いがみられる.すなわち, 40歳未満の比較的年齢の若い主婦の場合には栄養・健康対策因子や代替食選好因子に規定されるような評価項目, 40歳以上の比較的年齢の高い主婦の場合には栄養・健康対策因子のほかに成人病対策因子や献立デザイン因子に規定されるような評価項目に対する高い評価が, 積極的な消費拡大意欲に結びつくことがわかった.
次に, 野菜利用の実態について分析すると, 生活費水準の影響と, むしろそれ以上に, 回答者の年齢の影響が顕著であった.すなわち, 回答者が40歳未満の場合には, 夕食の献立に採用した野菜を素材とする料理の種類は比較的少なく, それらの料理に用いられた野菜の品目数も比較的少ないが, これに対して, 回答者が40歳以上の場合には, 比較的多種類の料理法で比較的多品目の野菜を利用する-という, 対照的な二つのパターンが認められた.
消費者は, 年齢や生活費水準のいかんにかかわらず, 一般に, 野菜の消費拡大に積極的な意欲をもっていることが確かめられた.しかしながら, 今後の比較的短い期間について考えるなら, 消費者がその積極的な野菜消費拡大意欲を満足すべく行動する場合, 20歳代・30歳代の主婦と40歳代・50歳代・60歳代およびそれ以上の年齢の主婦とでは, それぞれ, 異なる潜在的ニーズに規定された野菜消費の効用に関する異なる評価・イメージを動機として, 異なる消費行動一すなわち, 40歳未満の主婦の場合には少品目多量消費, 40歳以上の場合には多品目少量消費といった対照的な行動パターンーをとる可能性が高いと思われる.購買行動面からみたその実証的検討および今後の動向の把握が今後に残された課題である.また, 野菜消費購買行動に関する長期的展望を行う場合には, 年齢階級別にみた主婦の意識や行動の違いが, 各年齢層に固有な特徴を反映したものなのか, それとも各世代に固有な特徴を反映したものなのかについての調査・検討を進めることが必要であると思われる.
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