今日, 日本プロ野球ビジネスは危機的状況にある。それは日本においてプロ野球という事業を支える社会基盤が整っていないからだ。例えばその危機的徴候は以下の4点にも見られる。
1) 観客マーケットの変化-特に若年層の野球離れが著しい。個を確立したコミュニケーション手段を尊重する世代には, プロ野球観戦という他との均一性と集中度が必要とされる大衆娯楽は受け入れられ難くなっている。
2) “地域”のない日本-地域ナショナリズムが確立しフランチャイズ型スポーツが成功している欧米とは異なり, そもそも日本には地域共同体意識が薄い。また新興住宅地からの若年層の人口流出・低下, 高齢化の促進なども日本で地域密着のスポーツが成立し難い要因として考えられる。
3) 1球団・巨人への集中を促進する放映権ビジネス-米国では複数の球団が放映権価値もつが, 日本ではただ1つの球団がもつだけである。
4) 国外への人材の流出-米国のMLBは慢性的な選手不足に陥っており, その結果日本人をはじめとする外国籍・外国出身選手が急増しつつある。MLBによって日本選手の掠奪のみならず, 日本での野球興業の営業権も侵略される可能性が大きい。
こうした現状を考慮し日本プロ野球ビジネスの未来を推測するならば, 劇的な変革が行われない限り, 緩やかな縮小均衡の道を辿り, 社会の変化が認容してくれる規模でのみ生き残るというシナリオが浮上してくる。
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