【背景・目的】
Juglomycin A (1) とB (2) は Streptomyces sp. 190-2 1 から、juglomycin C (3), D (5), E (6), F (7) は Streptomyces sp. 815 2 から単離され、枯草菌や大腸菌に対する抗菌活性を有することが報告されている。Juglomycin C amide (4) は1,4-ナフトキノン天然物の生合成研究の過程で発見された化合物である3。また Juglomycin Z (8) はStreptomyces tendae Tu 901/8c の培養濾液から単離され、juglomycin A とほぼ同等の抗菌活性を有することが知られている4。Khatmiamycin (9) は Streptomyces sp. ANK313 から単離され、抗菌活性の他に植物病原性卵菌 Plasmopara viticola の遊走子に対する運動性阻害や溶菌作用を有することが知られている5。今回我々は天然物 1 ~ 4 の生合成経路を模倣し、これら天然物群の系統的かつ網羅的な合成法の確立に成功した。さらに本研究で確立した合成法を応用し、juglomycin D (5) の合成も達成したので報告する。
【合成戦略】
化合物 1 ~ 4 の生合成経路は、ポリケチドⅡ型酵素により8分子のマロニルCoAを出発物質として行われる (Scheme 1) 3。この生合成経路では共通中間体である (S)-NHAB が生成し、その後、酸化や官能基変換を経て 1 ~ 4 が系統的に生合成されると考えられている。我々はこの生合成経路を参考にし、(S)-NHAB と類似した構造を有する鍵共通中間体 10 を設計した。10 に対して酸化及び官能基変換を行い、jugolomycin C (3)、juglomycin C amide (4)、および juglomycin Z (8) を合成する。また 10 の酸化により分子内ラクトンを形成し、化合物 11 と 12 を得る。そして 11 と 12 より juglomycin A (1) とB (2) をそれぞれ合成し、これを経由して khatmiamycin (9) へと導くこととした。
【共通鍵中間体 10 の合成】
既知物質である臭化アリール 13 6とエポキシド 14 7をグリニャール反応によりカップリングし 15 を合成した。次に第二級アルコールを MOM 基で保護し、16 を得た。続いて側鎖末端の TBS 基の脱保護により、17 を得た。これを
デスマーチ
ン酸化によって 18 へと変換し、次いでピニック酸化を行い鍵共通中間体 10 を得た (Scheme 2)。
【Juglomycin C とJuglomycin C amide の合成】
得られた鍵共通中間体 10 より juglomycin C (3) と juglomycin C amide (4) の合成を行った (Scheme 3)。まず化合物 10 に対して CAN 酸化を行い、ナフトキノン 19 を得た。続いて、トリフルオロ酢酸 (TFA) による MOM 基の脱保護を行うことで天然物 juglomycin C (3) の合成を達成した。
続いて10 より juglomycin C amide (4) の合成を行った。鍵共通中間体 10 に対してアミド化を行い、20 を得た。続いて CAN によるキノン部位の構築を行い 21 へと変換した後、MOM 基の脱保護により天然物 juglomycin C amide (4) の合成を達成した。
【Juglomycin Z の提唱構造式の合成】
次に juglomycin Z の提唱構造 (8) を合成した (Scheme 4)。 10 に対して CAN 酸化を行い 19 を得た後、キノン部位の3位にメチル基の挿入8を行い 22 を得た。次に MOM 基の脱保護を行い、juglomycin Z の提唱構造 (8) を得た。また単離文献に従って、 8 をメチルエステル23 へと誘いた。合成した 8 と 2
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