本論文では1990年代以降の国土政策,農林業政策等の諸政策における都市農山村交流の政策的位置づけを整理し,その方向性について検討した。1990年代初頭における主要な動向としては,「民活型」大規模リゾート開発から「官活型」の農村型リゾートあるいはグリーン・ツーリズムへ,特に森林に関しては「森林の総合利用」中心から「国民参加の森づくり」中心の展開へ,さらにトップダウン・ボトムアップ双方からの森林ボランティア活動の育成・発展の3点に整理することができる。1990年代後半以降は,新基本法農林政への転換の中で,都市農山村交流は地域活性化対策の柱の1つとなった。2002年からは政府の経済活性化戦略に位置づけられ,8府省連携の巨大プロジェクトへと変貌を遂げている。現段階における都市農山村交流は,一方でグローバル化・自由化の流れに連動した国内農林業の縮小再編という国家政策を色濃く反映した展開方向にあり,他方では,食の安全・安心や豊かな森づくりを可能とする社会を目指す市民の行動と,そこに地域再生の活路を見いだした農山村地域との協働という発展の方向がみられる。都市農山村交流をめぐってはこのような2つの潮流の渦中にあるといえよう。
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