評定尺度を用いたテストや調査は幅広い分野で利用されるが,得られた
データ
は本来測定したい構成概念だけでなく,回答者の反応傾向をも反映してしまうという問題点がある.この両者を分離可能な
データ
収集法として係留寸描法が提案されており,とくに近年,現代テスト理論に立脚した係留寸描
データ
のベイズ多次元IRT 型モデルが提案された.こうした中で,本研究では先行研究を3 点において拡張した.第1 に,数値的なベイズ推定法および予測の観点からみて妥当性の高い情報量規準である,WAIC とPSIS-LOO を用いたモデル選択を導入した.第2 に,項目パラメータと回答者パラメータの双方を含んだ多値型の2 次元IRT モデルのような複雑な構造に適する,ハミルトニアンモンテカルロ法を用いて事後分布からのサンプリングを行った.第3 に,提案手法を2 つの新たな実
データ
に適用し,結果の汎用性を検証した.その結果,いずれの
データ
においても,提案手法を用いた係留寸描法による補正の効果が明確に示された.評定尺度を用いた計量分析における,回答者の反応傾向を用いて素点を補正することの重要性と,現代テスト理論に基づくモデルの有用性が確認された.
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