【はじめに】
近年、体外補助循環などにより劇症型心筋炎の救命率は改善している。一方、その後の離床や運動負荷量の調節についての報告は少ない。今回、搬送後に心肺停止に至った劇症型心筋炎の症例を経験したので報告する。
【症例】
40代男性。3日前から発熱、全身倦怠感が出現し近医を受診。抗生剤、解熱剤などを処方され帰宅したが、自宅で失神したところを目撃され救急搬送された。
【経過】
搬送後、痙攣と一致して補充調律を伴わない完全房室ブロック、心肺停止状態となり胸骨圧迫やPCPS留置、カテコラミン投与により一命はとりとめたが、その後も補充調律の回復がないため体外式ペースメーカを留置しICU入室となった。第6病日にはPCPS、IABP、人工呼吸器、CHDFを離脱し離床を開始した。離床開始時は安静時心拍数100bpmで運動中は心拍数が130bpmを超えないように注意し、ギャッジアップ座位から開始した。疲労感などの自覚症状はないが、心拍数は120台まで容易に上昇したため、βブロッカー0.3mgから開始し、その後も慎重に安静度を拡大し、第12病日に歩行器歩行50mを実施した。歩行中の心拍数は95bpm以下で、その後も徐々に安静時、運動時とも心拍数高値は改善し、第17病日にはエルゴメーターを20ワット10分から開始した。第21病日には20ワット30分に至り実施中の疲労感の訴えはなく、運動中の心拍数は90bpm以下であった。しかし同日の夕方に非持続性心室頻拍(NSVT)を認め、翌日のエルゴメーターでは負荷量増加は行わず心拍数90bpmを超えないよう注意して運動を行った。主治医と検討しβブロッカーの増量や運動負荷量の調節を行い、第25病日には階段昇降を行ったが心拍数90bpm以下であった。第27病日の朝方に再度NSVTを認めβブロッカー10mgまで増量し、アミオダロン400mgを開始した。さらに翌日に予定していた心肺運動負荷試験(CPX)は第31病日に延期となった。その後、階段昇降やエルゴメーターを実施したが運動中もNSVTは認めず、日常的な負荷を安全に行えることを確認し、第33病日に独歩で自宅退院となった。
【考察】
離床開始時、自覚症状はないものの、安静時から心拍数は高値で負荷量の増加は慎重に行う必要があった。またエルゴメーターや階段昇降へ負荷量や安静度を向上した際には昼夜を問わずNSVTを認め、安静度拡大や運動中の出現リスクも否定できないため、運動負荷量の増加に難渋した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例に発表の趣旨や個人が特定されないよう注意することを説明し同意を得た。
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