1. マ
ドジョウとフクドジョウ及びマドジョウ
とエゾボトケの各組合せの正逆両交配を行い, これらの卵の発生及び稚魚の発育経過を観察し,
ドジョウ
科魚類中の属を異にした3種類の間に存する類縁関係を考察した.
2. 各交雑卵の発生速度は, 各対照卵に比し梢遅く, 而も対照卵に比し何れも死卵の出現率高く発生期間中に最も高い死卵率を現わす時期は, 各交雑卵共, 嚢胚期より胚体形成期迄であつた。
3. 各組合せ各々に就いての孵化率は, マ
ドジョウ
♀×フク
ドジョウ
♂で20%, フク
ドジョウ
♀×マ
ドジョウ
♂で30%, マ
ドジョウ
♀×エゾボトケ♂で60%であり, エゾボトケ♀×マ
ドジョウ
♂では何れの組合せとも過熟卵で, 総て孵化する事なく斃死した。マ
ドジョウ
♀×フク
ドジョウ
♂及びフク
ドジョウ
♀×マ
ドジョウ
♂の組合せより孵化した稚魚の殆んど総ては奇型で, これらの奇型稚魚は孵化後2, 3日にして斃死し, 残りの極く僅かな正常に近い稚魚は孵化後10日より13日の間生残つた。マ
ドジョウ
♀×エゾボトケ♂より孵化した稚魚は孵化時正常型をなすものが多く認められた。然しこれちも餌を食べる事が出来ず, 孵化後14日より16日迄の間に総て斃死してしまつた。この様に雑種稚魚は早期に総て死滅してしまつたけれども, 生存中の発育経過に於て, 鰓及び色素胞の発達状態及び筋節数等より父方遺伝因子の影響を受けている事は明かであつた。
4. マ
ドジョウ
♀×エゾボトケ♂より生じた雑種稚魚の組織学的検査によれば, 雑種稚魚の各器官は, これらを構成する細胞の連絡が緊密でなく, 卵黄嚢周囲に水腫を生じ, 特に循環系に.就ては, 孵化後2, 3日より殆んど発達を認める事が出来なかつた。
5. 以上の実験結果より推察して, これら3種類の
ドジョウ
科魚類中, マ
ドジョウ
はフクドジヨウよりエゾボトケに近縁関係にあるのではないかと考えた。
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