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  • *田上 善夫
    日本地理学会発表要旨集
    2009年 2009s 巻 P1025
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/22
    会議録・要旨集 フリー
    _I_ 地球温暖化とその影響 20世紀末以降における気候変動のもとで、たとえば欧州でのブドウ栽培の大きな変化における主な要因として、地球温暖化があげられるようになっている。日本でも南方産の果樹や野菜の北方での栽培事例が増加するにつれ、同様の指摘が行われている。一方でこの期間における農作物生産の一般的な低迷ないしは減少は大きなものがあり、こうした変化に対する気候等の変動のもつ要因としての意味や程度、また影響の過程は明らかではない。ここでは、欧州などにみられるように気候変動とのかかわりの深いブドウなどの果樹を例にして、栽培用地の成立の要因を明らかにし、さらに変動の影響に関する検討を試みる。
    _II_ 近年の果樹栽培の変化  果実酒用ブドウの栽培および醸造は、明治初めの甲府盆地に始まるが、ほぼ時を同じくして上越や信州でも行われてきた。さらに周辺の富山県などでも昭和初期には始められるようになる。現在では北日本に多く、また近年増加の傾向がみられる。 とくに、長野盆地や松本盆地、さらに甲府盆地に多数の生産地が集中する。1990年ころからは、農業構造改善事業を契機に、また耕作放棄地を転用して、さらに農商工等連携事業計画などの多目的なプロジェクトの一環として、各地に比較的小規模なブドウ栽培が増加し、直接あるいは委託による醸造も始められている。  生食用を含めたブドウ栽培用地も、醸造用のものと類似の傾向がみられる。長野、上田、松本、甲府の各盆地をはじめ、余市や南陽周辺などにも広く分布する。さらにブドウを含めた果樹園も、北信越周辺では長野、上田、松本、甲府の各盆地に多いように、ブドウ栽培地と同様の分布がみられる。全国的には、有明海周辺、瀬戸内海、和歌山、東海、東北南部の地域において、丘陵や山地斜面などの傾斜地を基本とした狭い帯状の分布が示される。栽培面積は、ブドウもミカンやリンゴと同様に、近年もなお減少傾向が継続している。ただし果実酒製造所は新たな開設も多く、傾向を異にしている。
    _III_ 果樹園の成立要因 現在の果樹園用地について、土地の地形、気候などの自然条件から成立の要因を明らかにする。国交省の国土数値情報より、土地利用および標高・傾斜度、土地分類、気候値の各メッシュデータを用いる。土地利用は昭和51、昭和62、平成3、平成9年のデータの中で、昭和51年の「畑」、「果樹園」、「その他の樹木畑」の分類項目は、平成3年以降には、「その他の農用地」に一括されたため、昭和51年のものを中心に用いる。共通して扱える基準メッシュ(3次メッシュ、約1km2)を基本とする。 果樹園用地の中でもその高度の違いは大きく、平均標高の高い内陸盆地でも、甲府、長野、上田、松本盆地の順により高くなる。また果樹園用地は斜面に位置することが多いが、最大傾斜の角度はとくに甲府および長野盆地の周辺部で高いものが多い。最大傾斜の方向は特定ではなく、とくに北方向にも多く現れている。土地分類の中の地形分類では、山梨は砂礫台地、長野は扇状地性低地に集中する。また土壌は、山梨では黒ボク、黄色、褐色低地の各土壌が多いのに対し、長野では淡色黒ボク、暗赤色、灰色低地の各土壌が多い。生育期間を4月から10月とすると、その間の平均気温は甲府、長野、松本の盆地の順により低くなる。盆地でもその周辺部山麓では低くなるが、甲府で18℃、長野で17℃、松本で16℃台である。降水量は甲府、長野盆地で少なく、800mm以下であり、とくに600mm以下の地域も現れる。 果樹園用地の自然条件を、クラスター分析により分類して示す。5型に分けた場合、_I_少雨、_II_平坦高温、_III_高地低温、_IV_傾斜、_V_低地多雨、の特色をもつ型がある。甲府盆地の周辺部は_IV_の傾斜、松本盆地は_III_の高地低温、長野盆地は_III_、_IV_の型が現れる。一方他の型の_II_は盆地中央部、_I_は_II_に隣接した高地側、また_V_は北陸に多く現れる。
    _IV_ 気候変動への対応の検討 果樹園用地には、地形や気候の土地の条件が明瞭に現れるが、およそ盆地間では差異が大きく、また盆地内でも中央部と周辺山麓ないしは山地斜面部とでも差異があることが明らかになった。基本的な自然条件が異なるので、温暖化などに対してもこうした局地ごとの対応の検討が必要となる。とくに果実酒用のブドウでみた場合、栽培品種による生育期間の適温は、リースリンクやピノ・ノワールで15℃、シャルドネで16℃とされ、またメルローやカベルネ・ソービニヨン、サンジョベーゼや
    ネッビオーロ
    で18℃とされる。これらにより欧州各地の主力栽培品種に差異が生じるが、とくに甲府盆地では上記品種の適温の上限に近いために、気候の変動の影響が大きいことが考えられる。
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